メルカリの怪


NHKのニュースで見ましたが、「ダークストア」なるものが登場したようです。ダークなんて怪しい名前ですが、リアルな店の存在しない、宅配専門スーパーらしい。ネットで注文し、10分以内に物が届くということです。配達先を店舗の2Km以内に限定し、店舗内はアマゾンの倉庫方式最短距離で物を取り出し、自転車で配達するという方式のようです。
ますますネットで何でも出来る、便利な時代になっていくようだか、大丈夫だろうか。
とここまでが前振り。

ここから、インタネットのダークストア、メルカリで起きた僕の事件です。

メルカリはご存じのようにネット上のフリーマーケットでコンピュータ部品から野菜まで、ゴルフパターから幼児用ワンピースまで取り扱うサイトですね。僕もアカウントを持っていて、数回使ったことがあります。製造販売が終わった商品を捜すのに便利ですした。
Yahoo!などと比較すると操作性(特に出品者側)が良いのが特長ですね。

しかし、新聞、テレビなどマスメディアではあまり話題になっていないようですが、メルカリ(メルペイ)のセキュリティの対応が甘く、トラブルが多発しているようです。メルカリスマートペイというスマホを活用した支払い方法が問題のようです。

まず、メルカリ本体からのお知らせから。最近(12月17日)のものです。


【重要】メルカリ・メルペイを装った不審なメールと、そのお問い合わせ・今後のご案内について(12/17アップデート)

現在、メルカリ・メルペイを装った不審なメール・SMSが急増していることを確認しております。

本件に関して、多くのお客さまからお問い合わせをいただいていることや、被害を未然に防止するために監視を強化していることから、お問い合わせ返答・ご対応までに通常より時間を要しております。

(略)

【お問い合わせ後の対応について】
不正被害にあわれたお客さまにつきましては、お問い合わせいただいた後、アカウントのご利用状況を事務局で確認のうえ、以下お手続きを行わせていただきますのでご確認ください。

(1)お客さまの被害防止のため、まずメルカリ・メルペイの機能を制限させていただきます
(2)ご利用状況に応じて、本人確認書類のご提出をお願いする場合がございます
(3) 本人確認および、アカウントの安全が確認でき次第、制限を解除いたします
(4)不正被害が確認できた場合には、補償の手続きを進めさせていただきます

※お問い合わせ方法については、本文末尾の【不正なサイトに情報を入力してしまった場合について】に記載がございます

驚くを通り越して、呆れ果てましたね。

セキュリティトラブルが多発し、「お問い合わせ返答・ご対応までに通常より時間を要して」いるとヌケヌケと白状するとは。(1)~(4)までの対処も凄い。悪いのは不正する犯人ではなてくて、客だとでも考えているのだろうか。被害さえ補償すれば、いいだろうと開き直っているとかしか思えない。 この会社は本当にネットワーク企業なのですかね。

引用を続けます。


【利用制限中のメルペイスマート払いの清算および督促について】
不正対策による利用制限中でメルペイスマート払いの清算ができず、督促を受けているお客さまにつきましては、ご不安・ご不快な思いをおかけしておりまして、誠に申し訳ございません。

● 清算ができない場合
事務局からの不正利用分の補償完了後に清算をお願いいたします。
※すでに清算をご負担いただいているお客さまにつきましては、必ず補償をいたしますので、恐れ入りますが、下記【補償の手続きについて】をご確認ください

● 身に覚えのない督促がくる場合
該当の督促については順次停止対応を行っておりますので、対応完了までお待ちいただけますと幸いです。

なお、不正対策による利用制限中でメルペイスマート払いの清算ができない・督促がきている場合、信用情報に影響することはございませんのでご安心ください。

凄い内容ですね。どこがスマートなのか分からないが(^^;;;、これではおちおち「メルペイスマート払い」なるものは使えそうもありません。

この「メルペイスマート払い」はスマホを使ってメルカリ内の取り引きを決済する仕組みのようです。これが多分セキュリティホールだらけだったということなのでしょう。おかげで「補償しないといけないような清算」とか「身に覚えのない督促」とかが発生する。


と、ここまでが、本題に入る前の前段。本題に入ります。

何でメルカリのこういう状況に気が付いたかという、実は僕のキャッシュカードが不正利用されようとしたからです。カード会社からの連絡で気が付きました。調べたら僕のメルカリアカウントも乗っ取られていました(^^;;;。

幸い、カード会社のセキュリティはしっかりしているので、僕の被害はありませんでした。

何故、乗っ取り事件が発生したか、反省も含めて、白状しましょう。

「アカウント」>「お知らせ」の中に「購入のお知らせ(下から2番目)」があり、



クリックすると次の画面が出てきました。ビックリしましたね。



これが僕のアカウントを不正利用して購入されてしまった商品です。ゲーム用のコントローラー+ディスプレイのようです。ゲーム用にしては結構高額な商品ですね。こんなもの僕が買うわけがない。
「お知らせ」画面の購入の案内の下にあるログイン通知を発見。
「アカウント」>「個人情報設定」>「ログイン履歴」をチェック。



メルカリのアンドロイドアプリを使ったことは無い(スマホでアクセスしたことが無い)ので、12月15日のアンドロイドアプリをチェック。



この12月15日のログインで、不正アクセスが開始されたようです。
しかしこれだけ情報が分かっているのなら、簡単に不正アクセスした犯人は特定出来そうなものです。ipアドレスはocnのものですし、Meizuというのはスマホのメーカーです。また不正に購入した商品の届け先の情報はメルカリのログに残っているはずです。直ぐに警察に通報し、犯人を逮捕するべき内容でしょう。
それで、思い出したのですが、同じ日にメルカリから変なメールが送られていました。



引用でなくthunderbirdの画面を表示したのは、メール送信者のアドレスをみてもらいたいからです。
まんまと引っ掛かりました。送信者のメルカリ名がmercariがrnerucariになっている !

迷惑メールは山ほど受信していますので、怪しいリンクはクリックしないことにしています。 しかし、これはメールの送り手のアドレスがrnerucari(r n erucari)となっているので、本物と勘違い。ログインしてしまいました(^^;;;。

ログイン画面から暗証コードを入力したら、本来スマホとの二段階認証になるはずなのに、いきなりクレジット番号を入れろといってきました。変だと思い、そこで止めておきました。「何故、メール送信者がメルカリなのにこんなに怪しいのだ」とメルカリに不信感を抱きました。
メールアドレスのトリックに気が付いたのは、クレジットカード会社からの不正利用に対する本人確認の連絡があり、調べ直してからです。「上手くやられたなぁ」という感想。しかしクレジットコードは入力していないので被害は免れたようです。

というわけで暗証コードを盗まれてしまいました。もっともメルカリ用に使っている暗証コードは海外の掲示板などに書き込みをするための、最悪、流出してもしかたがないと考えている暗証コードです。メルカリはパソコンからのログインは携帯を使った二段階認証を設定しているので、僕の携帯が奪われない限りはログイン出来ないはずです。

ところが、アンドロイド端末(スマホのことだと思います)からログインできました。ということはメルカリのスマホアプリに何らかのセキュリティホールがあるということになりますね。

さて、アカウントのマイページに閲覧履歴という項がある。クリックしてみました。



不正アクセス犯人の閲覧履歴がちゃんと残っていました !!!

「ウーム、あきれたものだね」。この不正犯人、かなり低レベルのクラッカーですね。犯行を隠すという技術がないのだろうか。何をやったのか丸見えではないか。こっちが気が付くまで、4日間位、やりたい放題だったようです。ただ取り引きしたのは上記の任天堂スイッチのみ。取引が一件だけだった理由は不明です。
僕のカードを不正利用しようとして失敗したわけだから、早晩、不正アクセスはバレるわけで、一刻も速く証拠隠滅、退却する一手のはずだが。
逆に、この犯人は、スマホだけで使えるスマートペイという方法で支払いを行なったようです。問題は銀行の口座とリンクしていないのに、何故、スマートペイが使えたのかです。これもメルカリのセキュリティホールですね。 メルカリ/メルペイはセキュリティホールだらけで、腕の悪いクラッカーには天国のような環境だということなのですかね。

メルカリ/メルペイも自らの非は認めているようです。最初に引用したように「メルカリ・メルペイを装った不審なメール・SMSが急増していることを確認」していて、当面は顧客の被害を全て補償することで対応しています。
最初のメルカリからの「お知らせ」の続きの部分です。

【補償の手続きについて】
お客さまの不正被害が確認できましたら、不正利用された金額分の補償手続きを進めさせていただきます。
・原則、メルカリアプリまたはお問い合わせいただいたメールを通じて、事務局からお客さまへ補償申請書のご提出をお願いします
・事務局で補償申請書の確認ができましたら、不正利用された金額分を決済方法に応じて補償いたします

(略)

※補償申請書の提出には、警察への相談や届出の記録が必要です
※補償申請書の内容に不備があった場合、再度提出をお願いする場合がございます
※メルペイスマート払い等が不正に利用され、請求額をお客さまが一時的に負担された場合も補償の対象となりますので、ご安心ください
(以降、略)

直ちにフリーマーケットのネット運用を中止して対応に全力を尽くす。被害を補償するのは当然ですが、犯人逮捕のため「自ら」警察に相談・届け出するのが当たり前でないだろうか。先程指摘したように犯人逮捕のための情報はいくらでもあるのだから。
それなのに、被害額は補償するから、安心してくれとは何たる台詞か !!! 酷いですね。

最後に、メルカリ連絡板を使い、メルカリに送った僕のメッセージを引用します。

re: [24865] 会員登録・ログインについて

ご参考までに、こちらでの経緯を書いておきます。

xxカード、yyファイナンスの二社より、「ご利用のカードが不正利用されたようなので、本人確認したい」旨の連絡を受けました。どちらの不正利用もメルカリにて決済時に使用されたものとのことでした。決済金額は何れも総額100万円以上でした。幸い、両カード会社共にカード会社側で不正に気が付き、決済処理はされず、こちらに電話、Eメール及び封書(手紙)で連絡がありました。両者と相談し、xxカードは解約し、yyカードはロックをかけ(こちらは暫定対応です)、対応しています。
今のところこちらに金額面での損害は発生していません。
しかし、そちら(メルカリ側)の、こちらから問い合わせしないと、何の連絡もない対応については疑問に思っています。おかしくありませんか ?

> お客さまのアカウントのご利用状況を調査いたしましたところ、不正ログインによる被害がある可能性を確認しました

こちらでもアカウントにログイン出来るようになったので、確認しました。
ここ五日間位の閲覧履歴はスマホからの不正アクセスによるもののようです(私はスマホからのアクセスはしていません。二段階認証用に利用するだけです)。また住所も多分変更されており(変更されたことが何故こちらのメールアドレスに通知されなかったのか疑問です)、その住所を使い、問題の商品が不正購入されたようです。商品の送付は行なわれたようですから、これは不正な取り引きです。当然、私は支払う義務はありませんので、出品者が損害を被ることになります。

>お客さまの配送先登録情報は、第三者により異なる情報を入力されている場合があるため、安全を考慮し事務局にて削除いたしました。

これは確認しました。合わせて、暗証コードを新しいものに変更しました。スマホからの不正利用者のアカウントの悪用に対する取り敢えずの対応は出来たかと思います。当たり前ですが、古い暗証コードを人に教えたことはありません。

>大変お手数ではございますが、再度ご自身の配送先登録情報を、ご入力いただきますようお願いいたします。

今回のトラブルで登録したメールアドレス、暗証コードと関連するクレジット口座情報が流出し、悪用されていることは明らかなので、現在のアカウントは削除したいと思います。
退会手続きを取ろうとしましたが、「メルペイスマート払いの清算方法を設定していないので、退会処理できない」というエラーになります。なんとかして下さい。
当然、メルペイスマート払いは悪用した犯人が指定したわけで、私は関与していません(パソコンでしか使っていませんので、指定もできません)。

至急対応よろしくお願いします。

何故、掲示板の出来そこないのような、この方法で返事をしないといけないのでしょうか。普通にEメールで連絡して下さい。そちらはこちらのメールアドレスを承知しているわけですから。また、回答のメールで名前も名乗らないというのはどういうことでしょうか。

これは未遂ですが、キャッシュカード情報を悪用する数百万円規模の不正利用です。明らかに刑事事件となる犯罪です。適切な対応よろしくお願いします。

こういう、そちらの対応が犯人の犯罪行為を助長しているように思います。

前半の部分は「スマートペイの何たるか」と「フィッシュング詐欺メールのトリック」が分かっていなかったので、修正する必要があります。

この連絡板を使った連絡に対して、メルカリから何の返事もありません。
しかし、返信の本文にも書いてありますが、何故、返信を掲示板を使ってやらせるのですかね。こんなやり方をしているから、対応が放りぱなしでも済んでいるのではないか。僕の経験ではamazonはメールでチャント返事をしてくました。

という訳で、メルカリには愛想が尽きたので、自力で退会しようとしたら(このやり方を見つけるのも大変でした)、こうなりました。



そして、アカウントの「やることリスト」に、こういう表示がされています。



クリックするとこういう画面となります。



パソコンでは使えない機能のようなので、当然の結果ですが、「バカにするな」と怒鳴りたくなりますね。「メルカリはどうしようもない会社だなぁ」と思います。
インタネット上のフリーマーケットとしてメルカリの使い勝手は大変良くできていて、個人の事業者などに手軽な販売用マーケットとして活用されていることは評価しますが、セキュリティとトラブル対応は酷いですね。何とかならないものでしょうか。

(others)   2021/12/25

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Josquin & the Franco-Flemish School (34 CD)


13世紀(多声化)後の西欧音楽の時代の区切りを代表する作曲家を5人挙げよといわれると、僕の場合

  • ギヨーム・ド・マショー (14C)
  • ジョスカン・デ・プレ (15C)
  • クラウディオ・モンテヴェルディ (17C)
  • ヨハン・セバスチャン・バッハ (18C)
  • ドミトリー・ショスタコーヴィッチ (20C)

となります。

バッハ -> ショスタコーヴィッチ 間に関していえば、 何で、モーツアルト、ベートーヴェンが無いのじゃ。 シューベルトやブラームスはどうした。 ドビュッシーとストラビンスキーとウェーベルンを忘れてないか。 などなどのいろいろ批判はあると思いますが、全て無視。 単声のグレゴリオ聖歌とその後の二声/三声の音楽は準備期間と考え、作曲家名が明らかになっているポリフォニーの音楽がヨーロッパ音楽の特徴と見れば、大体1.5世紀(150年)毎に1人大天才が現れる。
妥当な選択であろうと思っています。

マショーは初期多声化音楽の最後の巨匠。ジョスカン・デ・プレは中世音楽の様々な音楽を統合した作曲家。モンテヴェルディ、バッハはそれぞれルネサンス、バロック様式の最後を飾る天才。そしてショスタコーヴィッチについてはハイドンからストラビンスキー、バルトークまでの様々な作曲家の作品を吸収し、20世紀という時代を象徴する作品を作曲したという理由で選びました。 20世紀を代表するという意味では、本当はイアニス・クセナキスとしたかったのですが、作品聞いたことがある人は少ないだろうから、知名度で妥協しました(^^;;;。

さて、僕の選択がまったくの極少派で、大方のクラシック音楽ファンからみれば、「それ、なぁに。マショー、デ・プレって、何ものじゃ」となることは重々承知で書きます(モンテヴェルディは名前や作品をご存じの方は多いでしょう)。
もうちょっと、マショー、デ・プレというような素晴らしい作曲家の作品が聴かれもいいのじゃないですかね。
今年はジョスカン・デ・プレの没後500周年ですね。ベートーヴェン没後200年では4回も特集を組んだレコード芸術なのに、デ・プレは全く無視。残念なことです。


と、ここまでがタイトルのCDを紹介するための長い長い(^^;;;前置きです。


横浜に出かけた帰りにTowerRecordに寄りました。
「Josquin & the Franco-Flemish School (34 CD) / ジョスカン・デ・プレとフランドル楽派(34CD)【輸入盤】」というアルバムを発見。ジョスカン・デ・プレ没500年、CD輸入盤2021.07.09 発売とあります。
CD34枚組で8.5K円。一枚あたり250円ということになります。ベートーヴェン全集とかショスタコーヴィッチ全集ではなく、デ・プレを中心とするフランドル楽派の作曲家の傑作を集めた選集がこの値段で発売されているとはビックリですね。
三分の一位のCDは持っていて、愛聴盤も幾つかあるのですが、「まあいいか」と考え、getしちゃいました。

このアルバムについては Warner Music Japan のこのページで紹介されています。この紹介文は素晴らしい内容ですね。百科辞典でもこうは上手く要約出来ないだろうというレベルでフランドル楽派の音楽について簡潔かつ適切に解説されています。
僕が下手に解説するより、そのまま使った方が良さそうなので、全文を引用します。

最高潮に達したポリフォニーによる、様々なフランドル楽派の音楽を、ヒリヤード・アンサンブル、アンサンブル・ジル・バンショワ、タヴァナー・コンソート、キングズ・シンガーズなどのこのジャンルとして定評のある有名演奏団体によって演奏された、印象的な美しさを醸し出した記念BOX!
 15世紀から16世紀にかけて活躍したフランドル楽派の作曲家には、バンショワ、デュファイ、ジョスカン・デ・プレ、オブレヒト、ド・ラ=リュー、イザーク、オルランド・ディ・ラッソ、ヴィラールト、デ・ヴェルトなどの多くの作曲家が含まれていました。200年にわたる西洋音楽の歴史にまたがり、音楽の言語が古代のモダリティからバロック美学の夜明けを示す調性へと徐々に移行するにつれて、フランドル楽派はルネッサンス全体で繁栄しました。中心的作曲家ジョスカン・デ・プレ(1440-1521)を記念するだけでなく、このセットには、フランドル楽派の他の多くの主要な作品が含まれており、これらの音楽を専門とする演奏者たちによって研究や解釈されたさまざまなジャンルが含まれています。モテット、ポリフォニックなミサ、詩篇などこれらの作品は、アンサンブル・ジル・バンショワ、タヴァナー・コンソート、ヒリヤード・アンサンブル、キングズ・シンガーズなどのこのジャンルとして定評のある有名演奏団体によって印象的な美しさで捉えられています。この最高潮に達したポリフォニーは、神聖なものと世俗的なものの近さ、そして驚くべき現代性の思考・・・これらすべての特質は、この音楽が今日でも私たちにとってそのような即時性を持っている理由を説明しています。

 2021年8月27日(c.1440-1521)は、作曲家ジョスカン・デ・プレが亡くなってから500年を迎えます。ジョスカン・デ・プレは当時の全ての作曲技法を見事なまでに意のままに操っており、存命中既に著名な作曲家であり、現在ではその時代の最も優れた代表者であったと看做されています。
 既存のフランスの土地に加えて、フランドル公国の所有物には、最終的にはバル公領、ロレーヌ公国、ルクセンブルク公国、ブラバント公国、ヌヴェール県、ルテル県、アルトワ伯領地、ヴェルマンドワ伯領地も含まれていました。16世紀中期になるとフランドルだけでなくイタリアを始めヨーロッパ全体で支配的な地位を占めていました。フランドル楽派は、この広大な領土にちなんで名付けられました。建築、彫刻、絵画、音楽はすべて、ブルゴーニュの野心の恩恵を受け、大陸が人文主義とルネッサンスの時代に移行するにつれて、ヨーロッパ全体に芸術の新しい方向性として広めました。そのビジョンでは、人類は神の創造の頂点と見なされ、芸術の義務は人間の知性とその創造的行為への応用の両方を美化することでした。音楽レベルでも、最も多くの人々とのコミュニケーションを模索していました。これにより、様々な作曲家が独自の書法によってその時代に適合された新しい種類のポリフォニーが生まれました。その音楽技法は、それぞれの声部が対等の価値をもち、お互いに旋律要素を模倣しあいながら展開していく通模倣様式が用いられ、時代が進むにつれて自由な模倣形式へと進化していきました。その豊かな芸術運動は、声楽、器楽、宗教的(ミサ、モテット…)、世俗的(シャンソン、マドリガーレ、舞曲…)など、いくつかの面で音楽史の柱となっています。
 この34枚のCDボックスは、ジョスカン・デ・プレ周辺の特徴的な作曲家の大規模なパネルを通してこれらすべての側面を例示しています。ジル・バンショワ(c.1400-1460)、ギヨーム・デュファイ(1397-1474)、ヨハネス・オケゲム(c.1410-1497)、ハインリヒ・イザーク(c.1450-1571)、ピエール・ド・ラ=リュー(1460-1518)、トーマス・クレキヨン(c.1505-after1557)、フィリップ・デ・モンテ(1521-1603)、アドリアン・ヴィラールト(1490-1562)、オルランド・ディ・ラッソ(1532-1594)、ジャケス・デ・ヴェルト(1535-1596)および、他の多くのあまり知られていない作品を含む演奏は、ここでは素晴らしいアンサンブルらによって演奏され、歴史的情報・研究に基づいた先駆者たちばかりによるものです。ヒリヤード・アンサンブル、アンサンブル・ジル・バンショワ、タヴァナー・コンソート、キングズ・シンガーズ、アムステルダム・シンタグマ・ムジクム、デイヴィッド・マンロウ、コンラート・ルーラント・・・など。
 この34枚のCDボックスにはベンチマーク的な録音も数多く含まれており、7枚分のCDは初CD化となります。またそれらは、オリジナル・マスターテープより、Studio Art&Sonによる24bit/192kHzリマスターされています。


さて、CD一枚毎のジャケットですが、オリジナルのレコード発売時のものは無視して、中世の様々な絵画が使われています。これが面白いです。全部並べて紹介しましょう。






それぞれのタイトルの詳細は画面では読み取り難いでしょうから、長くなりますが、紹介します。

《CD1:ジル・バンショワ:シャンソン集》[演奏]アンサンブル・ジル・バンショワ、ドミニク・ヴェラール(指揮)、[録音]1996-1997年
《CD2:雉の祝宴 ~1454年ブルゴーニュ公の宮廷における祝宴の音楽》デュファイ、バンショワなど、[演奏]アンサンブル・ジル・バンショワ、ドミニク・ヴェラール(指揮)、[録音]1989年
《CD3:宮廷の愛》デュファイ、バンショワ、作者不詳、[演奏]ロンドン古楽コンソート、デイヴィッド・マンロウ(指揮)、[録音]1972-1973年
《CD4:デュファイ:もし私の顔が青いなら》 、[演奏]ロンドン古楽コンソート、デイヴィッド・マンロウ(指揮)、[録音]1972-1973年
《CD5:デュファイ:シャンソン集》、[演奏]ミュンヘン古楽スタジオ、トーマス・ビンクリー(指揮)、[録音]1973-1974年
《CD6:デュファイ:ミサ曲 「見よ主のはしためを」》 、[演奏]アンサンブル・ジル・バンショワ、ドミニク・ヴェラール(指揮)、[録音]1992年
《CD7:デュファイ:ミサ曲「武装した人」& モテトゥス》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1986年
《CD8 : ギョーム・デュファイとその周辺(1)》、[演奏]アムステルダム・シンタグマ・ムジクム、ケース・オッテン(指揮)、[録音]1974年
《CD9 : ギョーム・デュファイとその周辺(2)》、[演奏]アムステルダム・シンタグマ・ムジクム、ケース・オッテン(指揮)、[録音]1974年
《CD10:ヨハネス・オケゲム:ミサ曲集(1)》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1984年
《CD11:ヨハネス・オケゲム:ミサ曲集(2)》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1988年
《CD12:ジョスカン・デ・プレ:1490-1520年のモテット集》、[演奏]カペラ・アンティクヮ・ミュンヘン、コンラート・ルーラント(指揮)、[録音]1965年 ※初CD化 《CD13:ジョスカン・デ・プレ:ミサ曲集》、[演奏]フィリップ・カイヤール合唱団、フィリップ・カイヤール(指揮)、[録音]1968年 ※初CD化
《CD14:ジョスカン・デ・プレ:モテットとシャンソン》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1983年
《CD15:ジョスカン・デ・プレ:ミサ、モテット、シャンソン集》 、[演奏]タヴァナー合唱団&コンソート、アンドリュー・パロット(指揮)、アンドリュー・ローレンス=キング(ハープ)、[録音]1983年 《CD16:ジョスカン・デ・プレ:ミサ曲集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1989年
《CD17:ルネッサンスのシャンソン集》、デ・プレ、ラ・リュー、ラッソ他、[演奏]アンサンブル・ジル・バンショワ、ドミニク・ヴェラール(指揮)、[録音]2000年
《CD18:ネーデルランド楽派の音楽(1)》、デ・プレ、イザーク、オケゲム他、[演奏]ロンドン古楽コンソート、デイヴィッド・マンロウ(指揮)、[録音]1975年
《CD19:ネーデルランド楽派の音楽(2)》 デ・プレ、イザーク、オケゲム他、[演奏]ロンドン古楽コンソート、デイヴィッド・マンロウ(指揮)、[録音]1975年
《CD20:ハインリヒ・イザーク作品集》、[演奏]カペラ・アンティクヮ・ミュンヘン、コンラート・ルーラント(指揮)、[録音]1969年 ※初CD化
《CD21:ハインリヒ・イザーク作品集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ケース・ブッケ・コンソート、[録音]1981年
《CD22:フィリップ・デ・モンテ:宗教的・世俗的歌曲集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ケース・ブッケ・コンソート、[録音]1983年
《CD23:死者のためのミサ曲(ピエール・ド・ラ・リュー)他》、[演奏]カペラ・アンティクヮ・ミュンヘン、コンラート・ルーラント(指揮)、[録音]1965年 ※初CD化
《CD24:ピエール・ド・ラ・リュー作品集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1990年
《CD25:トーマス・クレキヨン作品集》、[演奏]アンサンブル・ペル・カンタ・エ・ソナール、ステファヌ・カイヤー合唱団(声楽アンサンブル)、ステファヌ・カイヤー(指揮)、[録音]1978年  ※初CD化
《CD26-27:ラッスス:ダヴィデ懺悔詩篇曲集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ケース・ブッケ・コンソート、[録音]1985年
《CD28 :オルランド・ディ・ラッソ:モテットとシャンソン集》、[演奏]ヒリヤード・アンサンブル、ポール・ヒリヤー(指揮)、[録音]1983年
《CD29:オルランド・ディ・ラッソ:シャンソンとマドリガーレ集》、[演奏]キングズ・シンガーズ、[録音]1986年
《CD30:オルランド・ディ・ラッソ:モテット集》 、[演奏]キングズ・シンガーズ、[録音]1987年 《CD31:オルランド・ディ・ラッソ:マドリガルとモテット集》 、[演奏]アルスフェルト声楽アンサンブル、ヴォルフガング・ヘルビッヒ(指揮)、[録音]1980年
《CD32:ジャケス・デ・ヴェルト:マドリガーレ集 第7巻》、[演奏]コンソート・オブ・ミュージック、アントニー・ルーリー(指揮)、[録音]1988年
《CD33:アドリアン・ヴィラールト:作品集》、[演奏]ブリュッセル声楽アンサンブル、アンサンブル・ポリフォニーズ、シャルル・コニッグ(指揮)、[録音]1970年 ※初CD化
《CD34:ルネッサンス・ブロックフレーテ音楽集/スザート:舞曲集》、[演奏]ウィーン・ブロックフレーテアンサンブル、[録音]1980年 ※1-25 初CD化、 12の舞曲集(ティールマン・スザート)、[演奏]ロンドン古楽コンソート、デイヴィッド・マンロウ(指揮)、[録音]1971年


ご覧の通り、中世14世紀後半から16世紀前半までの音楽を俯瞰することの出来る選集ですね。演奏はどれも素晴らしい。お勧めします。

(music)   2021/10/24

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人類史上初の大愚行


予想通り、某国首相は辞めるようです。
「パンデミック下での五輪開催という人類史上初の大愚行(©中村文則、毎日地方欄の連載)」の結果だから、当然といえば当然ですが。

しかし、今日の毎日新聞は気合が入っていましたね。


一面トップはスポーツ誌並。「菅首相、退陣」とたった6文字の見出しで上段5cmを占めています。
他の紙面も記事は殆どが菅退陣に関するもので、相当前から準備していたのでしょうね。だって、発表から半日でこれだけの紙面を用意するには、相当前から用意していないと出来ないでしょうから。多分、首相が怒り狂ったという「総裁選前に解散し、総選挙」というスクープの頃から、この日が来ることを予想して、準備していたのでしょうね。

しかし、このスクープ、どこから漏洩したのだろうか。
首相に「お前辞めろ」と言われて、怒り狂った二階さん(かその関係者)が喋ったとしか思えないのですが、真相を知りたいものです。毎日には、是非、続編をインサイドストーリーでやって貰いたいです。

明日でパラリンピックも終わりですね。これで、サッパリしたから、是非、まともなコロナ対策が出来る方に首相になって貰いたいものです。


p.s. 尾見会長の首相退陣に関するコメントはアタリサワリのない内容でしたが、「やっと、あの頑固なバカが辞めてくれたか。良かったなぁ」という感じで、ニコニコというか、ホッとしたというか、ハレバレというか、セイセイしたというか、そういう表情だったのは面白かったです。正直な方ですね。

(others)   2021/09/04

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脱線その4


毎度おなじみの脱線シリーズ。列車ネタは尽きたので、船で。




殆どの事故は船長(操縦者)がボーっとしていたために起きたようです。日本丸も同じですね(^^;;;(^^;;;(^^;;;。

今日から悪夢のパラ五輪スタート。
トットと終わりにして、早く「まともな国」に戻って欲しいものです。

(others)   2021/08/24

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悪夢のパラ五輪


まだまだ続くですね。


こうなることは「サルでも分かっていた(^^;;;;」はずなのに、何で頑張り続けるのでしょうね。

(others)   2021/08/21

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恐怖のコロナ五輪


恐怖の「コロナ五輪」がはじまったようですね。



これだけ解任者が続出するとは。電Xもよほど特殊な人材が集まった会社なのですかね。五輪でボロ儲けしているのだろうと思っていましたが、経営状況は良くないという。謎です。
開会式、強行突破したようですが、大丈夫ですかね。ますます日本の評判が悪くならなければいいけど。まあ、関係者だけでお葬式みたいにやっている開会式なんて、一生懸命見る人はいないと思いますが。

どうせだから、もう一つ。



かなり高い確率でこうなる可能性があることは分かっていたのに、あえて自分の政治生命のために大バクチを仕掛けたこの国の首相はどう責任をとるのだろうか。

素直に知事の言うことをきいて、自宅でテレビ感染(^^;;; 観戦するしかないようです。


P.S.1 怖いフォントはここここにお世話になりました。

P.S.2 開会式での天皇による開会宣言のcelebrating(きねんして)は、どう聞いても、「記念して」としか聞こえませんね。やっぱり絶対に「祈念して(祝って)」とは言いたく無かったのでしょうね。
調べたら毎日だけ「祈念して」と書いていて、他は「記念して」ですね。何か意図があるのかしら。
P.S.2.1 その後、毎日も「記念して」に変えましたね。記者の聞き間違えだったようです。

P.S.3 突然登場した巨大なドローン球は、どう見ても、コロナ菌の象徴としか見えませんでしたね(^^;;;。
どうせだから、アリーナの上に舞い降りさせて、ゴジラと戦い、退治させるというような演出をすれば、面白かったのに(^^;;;。

P.S.4 大坂選手が聖火を点灯して良かったですね。翌日の対戦予定を変更して対応したということだから、最後の詰めで決めたのでしょう。優勝できるといいね。
3月には打診されていたようですね。ということは全仏騒ぎ前だから、関係者はハラハラだったのですかね。

P.S. 7/30.IOC委員というのは「 ハルマゲドン」だの「パラレルワールド」だと勝手なことをばかり言う連中なのだね。皆、東京湾に投げ込んで、コロナ菌でも飲み込んで頂ければよろしいのではないだろうか。
台風が来れば、日程を変更出来るのだから、東京2020はとっととあと一週間で終わりにしたらどうなのかね。アメリカテレビも、今更、違約金払えとはいえないだろうから。

(others)   2021/07/23

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脱線その3


正面衝突です。オリンピックとコロナが。




このままじゃ、「恐怖の五輪」となるのでしょうね。大坂選手と松山選手には頑張ってもらいたいと思いますが。

衝突するようにポイントを切り替えた張本人です。日本に来たようですが、何をしに来たのですかね。とっとと五輪と共に消え去れば(gone with the Olympics)いいのに。



どうせだから、もう一つ



早く、日本が脱線続きから立ち直れるといいですね。

(others)   2021/07/11

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Audio over Ether(5)


前回の続きです。

まず質問のメールから。

ところで、目指している、Arch Linux86_64フロントエンド+ラズパイ4AoEバックエンドは、
第一手を、AlbumPlayerか、squeezeliteかでまだ迷っています。
AlbumPlayerはWindows版を仕事のBGM用に使っており、Windows GUIの表示や
操作性はイマイチですが、NASには簡単につながります。
また、Daphileも(BubbleUPnP上でLogitech Media Serverと表示されますが)
JplayのJplayFemtoサーバーの代わりに使っており(JplayFemtoサーバーより
グラフィックを表示できる場合が多いです)NASには簡単につながっています。

ここで、いずれを使っても、「dlna対応の環境」にすれば、(webui)でなく、例えば、
BubbleUPnPが使えるのでしょうか。また、その手順はyoさんがお書きになった
「ArchLinux用イメージへの音楽ソフトの組み込み方」にあるのでしょうか?

相変わらず訳の分からない質問の連発で申し訳ありません。

このメールに質問の部分だけ回答することは簡単です。

問い1 『「dlna対応の環境」にすれば、BubbleUPnPが使えるのでしょうか。』
その通りです。
問い2 『その手順は「ArchLinux用イメージへの音楽ソフトの組み込み方」にあるのでしょうか?』
その通りです。

となります。
しかし、質問に正解が書いてあるのだから、上記のように質問にそのまま答えても、多分疑問は解消されないでしょう。従って、『その通りです』というだけの返信とするのはあんまりですから、返信は得意の長い脱線と前置きで開始します。
質問は『NAS』に関して丁寧に使用環境が説明されています。まず、この部分を確認します。

> 相変わらず訳の分からない質問の連発で申し訳ありません。

混乱する原因は、サーバーとか、NASという言葉が定義なしに
勝手に使われているので、おサルさん達(^^;;;には何がなんだか
分からないとなるのですよね。

僕もおサルの一人ですので、説明などという大それたことは
出来ないのですが、試してみますかね。

XXさんがNASと言っているのは、(ioデータなどの)市販のNASの
ことだと思います。実はこれらの市販のNASはlinuxで動いています。
サーバーソフトとしては、ファイルサーバーの場合はsamba、nfsが
動き、dlnaサーバーとしては MediaTomb、minidlna などが
動きます。
従って、空いているハードを使って、linuxを立ち上げ、これらの
ソフトをインストールしてやれば、市販のNASと同じように使えます
(僕はそうしています)。

また、WindowsはこれらのNAS機能をファイル共有という呼び名で
最初から内蔵しています。従って、共有を設定すれば、NASと同じ
感じで使えます。DLNAサーバーとしての機能も有効に出来ることは
ご存じの通りです。

ここまでが前段。多分、XXさんもご存じの内容だと思います。

NASといってもピンキリですね。ゼロが五つ位付くような高価なものが登場していますが、殆どは箱と電源代でしょう。基板とソフトだけだったら、頑張って、ゼロが四ついくかどうかですから。しっかりした箱に入ったインテルハードを使って、Linuxソフトを組み合わせ、電源を強化した方が良い音がすることは確実です。


上の写真は僕が使っているハンドメイドNASです。本体は以前このサイトで紹介したことがあると思いますが、10年近く前のatom機。ご覧のように、シリアルが2個前面にあったりして、工業用です。従って、頑丈なのが取り柄。超低速のatomですが、linuxであれば問題なく動きます。蓋を開けるのは困難なので、これにUSB接続でハードディスクを繋ぎ、NASとして使います。OSは手抜きでMINT(インストールが楽)。samba、minidlnaをサーバーとして使っています。
ネットワークは1G対応の光変換アダプターを使い、ハブに接続し(ハブ側にも同じものを設置してあります)、ノイズ対策しています。また電源は、ご覧のように、ダイトロンのac-dc変換アダプター(これはとても音が良いのでお勧めです)から、dc12Vを本体とハードディスクに供給します。

「Linuxソフトを組み合わせ」という部分ですが、勿論、samba+arch linuxというような組み合わせが推奨ですが、楽をするならDaphileがお勧めです。

引用した最初のメールにあるように、これを使ってJPLAYのサーバー機能の替りに使うことも出来ます。音はJPLAYの純正サーバの方がよいかとは思いますが、操作性がまるで違いますので、こちらの方が便利ですね。
英語版のJPLAYサイトのどこかにありますので、捜してみて下さい(JPLAYのサーバーとしてNASを使う方法を議論しているスレッドを捜せばよい)。

といううわけで、daphileの解説を続けます。

Daphileも、市販のNASと同じようにファイルサーバーとdlnaサーバー
としての機能を持ちます。
Daphileとは、高音質を狙い、コンパクトに構成した専用のlinux環境
(スクラッチといいます)で、Logitech Media Serverというソフトを
動かす統合型の音楽再生環境です。LMSは、Logitech Media Player
という音楽プレーヤと組み合わせて使う音楽用NASです。
このLMSというソフトですが、サーバーのサーバーというか、
サーバーの親玉みたいなものです。後で詳しく説明します。

さて、ここからDLNAについての解説を続けます。 DLNAを解説する理由はメールの質問がDLNAに関連するもので、DLNAとは何かということを明確にした上で回答した方がよかろうと思ったからです。

次に、DLNAについて。DLNAというのはマルチメディア(古い言葉
ですね^^;;;)環境に特化したUPnPシステムことです。
UPnPというのは名前の通り、電源コンセントと電気製品の関係の
ように、何でもつなげば、ネットワーク(家の中は電気配線の
ネットワークということになります)で使えるようにする仕組み
のことです。

音楽再生の場合、DLNAが定義するネットワークにつなぐ構成要素
(電気製品となります)の種類は三つです。
再生用のデータを保存するサーバー、
DACなどの再生用ハードに接続され、サーバーから送られてきた
データを再生用ハードに送り出すレンダラー、
入力された指示に基づきサーバーにデータの読み出しを依頼し、
レンダラーに受け取りの依頼をするコントロール・ボイントです。
GUIを持ち、再生する曲を指定するのはこのコントロールボイント
となります。
通常の音楽再生ソフトの場合この三つの機能は一体として構成
されており、分離することはできません。DLNA化のボイントは
この三つの機能が分離独立され自由に組み合わせることが出来る
ようになった点です。要するにメインアンプはラックス、
プリアンプはアキュフェーズ、DACはエソテリックという具合に
自由な構成がとれるようになったということです。

DLNA対応しているソフトウェア(サーバー、レンダラー、
コントロールボイント)であれば、特別な設定なしにネットワークに
つながり、お互いに使い合うことが出来ます。メインアンプを
アキュフェーズにプリアンプをラックスに、という具合に自由に
変えられるわけです。

二つ目の質問に答えるために、WindowsとLinuxでDLNA対応の仕方が異なることを紹介します。

但し、例外が一つだけあって、JPLAY FEMTO サーバーです。これは
DLNAサーバーなのですが、高音質化のために、JPLAY FEMTO 
レンダラー専用のサーバーとなっていて、他のレンダラーから使うことは
出来ません。

さて、最近の音楽再生用ソフトウェアですが、多くのものは従来型の
GUIやwebからコントール出来ると同時に、DLNA対応の機能拡張が
されています。Windowsで例をあげると、JRIVER、foobar2000、
TuneBrowserといったソフトはこのような機能拡張により、
設定すれば、サーバー、レンダラーとして独立して使えるように
なりました。
コントロールポイントとしての機能に関しては、GUIそのもの
となるので、通常はDLNA対応されることはありません。
例外がJRIVERです。JRIVERの場合は単独のコントロールポイント
としても使うことが出来ます。

ここでWindowsとLinuxでDLNA対応の仕方の中断して、得意の脱線(^^;;;。
上記のJPLAYサーバーの件も関連するのですが、以前、日本語JPLAYサイトの不当な検閲が厳しかったころの思い出話です。

実はこのJRIVERのコントロールポイントとしての機能とJPLAY FEMTOの
DLNA対応の仕方を巡って、面白いやりとりがあったのを思い出します。

このスレッドがそれです。
http://mimizukobo.sakura.ne.jp/cgi-bin/read.cgi?mode=all&list=topic&no=6030
JPLAY FEMTOサーバ+FEMTOレンダラーという組み合わせをJRIVERを
コントロールボイントとして使うことにより、JPLAY FEMTOの
音の良さとJRIVERの操作性を両立させようという実験に挑戦した
スレッドです。
結局、JPLAY FEMTOサーバーはタグ情報を扱わない、特殊な作り方が
されていて、FEMTOレンダラー専用としてしか使えないと
分かりました。
この結果、FEMTOサーバーにはタグ情報が存在しないのいで、
JRIVERのコントロールポイントは、一見、FEMTOサーバーを
使っているように見えるが、実はJRIVERサーバーを使っていた
ということが判明しました。
この時のJPLAYの内部動作を実験するというやりとりが、I氏を
苛立たせ、後の日本語JPLAY騒動につながったのですよね(^^;;;。

WindowsとLinuxでDLNA対応の仕方に戻って、今度はLinuxの場合の解説。これが第二の質問に答えるための前ぶりになります。

本題に戻します。
Windowsではこのように既存の再生ソフトの機能拡張としてDLNA
対応されたの対し、Linuxでは既存ソフトの外部にDLNA対応する
ための新しいソフトを追加して対応することが多いです。

例えば、mpdの場合upmpdcliというソフトを追加することでDLNA
対応されます。またAlbumPlayerの場合はレンダラーはAprenderer
という別のパッケージにされています。従って、このパッケージだけを
インストールすれば、後は標準のDLNAサーバー(例えばDaphile)と
コントロールポイント(例えばDubbleUPnP)を使い、DLNA再生する
ことが出来ます。

DLNAの解説の最後にLMSを紹介します。
これは質問はMPD+upmpdcliとAlbumPlayerの二者の選択となっていますが、squeezeLiteを使ったLMSというのも有力な候補ではないかと考えたからです。

次に、LMSについて。
LMSはもともとはLogitech Media Player専用の音楽用NASでした。
その後、独自に改良されJRIVERと同じように、DLNAサーバー、
コントロールポイント、レンダラーと全ての機能を持つ統合型の
音楽再生ソフトとなりました。

このソフトはWindowsでもLinuxでも動く両刀使いのソフトです。
Windowsでのインストールはインストール用のパッケージを
起動するだけですので、簡単です。Linuxの場合は動作環境
(動作に必要なスクリプト、言語ネットワーク関連ソフトなど)を
インストールする必要があり、それなりに大変です。
LMSをlinuxで使いたいということであれば、Daphileとして
使うことをお勧めします。Daphileとは専用のlinux込みでLMSを
使えるようにしたシステムです。イメージで提供されており、
インストールは簡単です。
squeezeliteというのはLMSのレンダラー機能で、Logitech Media 
Playerと入れ換えて使うことが出来ます。また、これだけを
独立させて、linuxで動かすことが出来ます。

長い長い前置きでしたが、以上がご質問に答えるための
予備知識です。

ということです。
それで、ようやく回答に辿り着きました。

> AlbumPlayerはWindows版を仕事のBGM用に使っており、Windows GUIの表示や
> 操作性はイマイチですが、NASには簡単につながります。

このNASは市販のNASのファイルサーバー機能のことですね。

> また、Daphileも(BubbleUPnP上でLogitech Media Serverと表示されますが)
> JplayのJplayFemtoサーバーの代わりに使っており(JplayFemtoサーバーより
> グラフィックを表示できる場合が多いです)NASには簡単につながっています。

これはJPLAYのレンダラー機能を使って再生させた時の話ですね。
「BubbleUPnP上でLogitech Media Serverと表示され」る理由と
「JplayFemtoサーバーよりグラフィックを表示できる場合が多い」
理由については既に解説しました。
「NASには簡単につながっ」たのはDaphileのファイル指定機能が
優秀だからですね。FEMTOサーバだとこれが大変なのはご存じの
通りです。

> ここで、いずれを使っても、「dlna対応の環境」にすれば、(webui)でなく、例えば、
> BubbleUPnPが使えるのでしょうか。また、その手順はyoさんがお書きになった
> 「ArchLinux用イメージへの音楽ソフトの組み込み方」にあるのでしょうか?

その通りです。但し、ここまで書いた内容はあのスレッドに屯す
皆様には常識であろうとと考え、省略しています。

最終的に回答はたったの二行。「ここまで書いた内容はあのスレッドに屯す皆様には常識であろうとと考え、省略しています」を省略しないで書くというのが長い長い返信の目的でした。

(PC_Audio)   2021/07/04

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Audio over Ether(4)


今回はAoEに興味を持つネット仲間とのやりとりのメールを引用するだけという超手抜き記事です(^^;;;。

彼はWindowsユーザとしてはベテランです。PCオーディオにも詳しく、JPLAYユーザで、二台構成を楽々と使していますので、Windows音楽ソフトについては十分な知識を持っています。しかし、linux経験はほとんど無く、ある方に勧められてdaphileを、僕が勧めてSMPDを使っているだけというレベルです。

メールの引用だけではあまりにも芸が無いので、多少、コメントをつけ、分かりやすく(かな?)することにします。
それでは、まず、僕が「AoEは音がいいよ」と教唆煽動した時のやり取りです。
僕の教唆煽動に素直に応えて頂き、彼は速攻でAPUをスイス本社に注文しようとしました。その時の彼のメール。

さて、私もSMPD-AoEによる高音質化には興味があります。そもそも「APU」が分かっていないので、
検索で調べて以下のように理解しました。

APUとは、Accelerated Processing Unitの略、もともとインテル互換CPUを作っていたAMDが
ATIを買収し、そのGPU技術を内蔵したCPUを開発しAPUと呼んでいる。APUは、
64bit版標準仕様についてインテルに先んじておりRyzenなどの高性能、高C/PのCPUを発表している。
ただし、archlinuxを走らせるAPUは単体のCPUではなく、組み込み型SoC(システムオンチップ)として
スイスのPC Engines社が開発、販売するLinux用のPCボードである。

PC Enginesは、興味深いことに、EU加盟国の個人向けには直販お断りで、
理由は"unspeakably bureaucratic recycling regulations in the EU"だそうですね。
幸い日本からは買えるようですので、「PC Engines apuボードシリーズの買い方をご紹介」
というサイトを参考とすると、例えば以下の品目を入手すれば良さそうです。

apu4d4
APU.4D4 system board (GX-412TC quad core / 4GB / 4 Intel GigE) $ 120.00

case1d4blku 
Enclosure for apu4 (4 LAN, black, USB) $ 10.00

ac12vus2
AC adapter with US plug $ 4.40

msata16g
SSD M-Sata 16GB MLC, Phison S11 controller $ 14.50

usbcom1a
Adapter USB to DB9F serial with USB cable $ 8.00

合計157ドル、送料は20~25ドルということですので、注文しようかと思っています。
恐縮ですが、上記品目や内容に過不足その他注意事項があればご指摘いただけますでしょうか。

さすが、情報処理のプロですから、APUの紹介は簡潔明瞭、素晴らしい内容ですね。
しかし、Linux経験無しで、いきなりヘッドレスのAPUというのは無謀の極みだと思います。「まあ、彼なら何とかなるだろう」と考え直し、構成の選択に関して、ちょっとだけアドバイス。僕の返信です。

xxxxさんもAPUユーザになるのですか(^^)。反対はしませんが、
x86_64版のSMPD-AoEはインテルorAMDハードなら何でも動く
ということはご存じですよね。取り敢えず古いハードて試すという
ことも出来ます。

それでご提示の構成ですが

apu4d4はapu2e2又はapu2e4で十分です。
PCENGINES社の方が「apu3は音楽用では無い」と言ったという
記事を読んだことがあります。
apu4は詰め込み過ぎだと思います(僕の意見)。

case1d4blkuはcase1d2blkuに変更。必須です。

msata16gとusbcom1aは使いこなせるなら、あった方がいいです。
使いこなせるの意味は、msata16gはイメージを書き込む必要が
あるから、usbcom1aはWindows側にPuttyなどシリアルでつなぐ
ソフトを用意する必要があるので。
どちらも簡単に出来ますので、あった方がいいですかね。

MicroSATA 16GBをWindows環境では使うためには適当なアダプターが必要です。例えばこの様な。


返信の「msata16gはイメージを書き込む」ためには、このようなアダプターが必要です。「msata usb アダプター」をキーにググれば簡単に見つかると思います。
さて、スイスからハードは到着。彼からのAPUへのArchlinuxインストール開始のメッセージです。

さて、この数日時間があったので、到着していたAPU2へのArchlinuxインストール挑戦に着手しました。
「サルでも」クラスに完成されていたラズパイ用SMPDとは天地の差以上の、超無謀な試みで
あることに気付きました。

なにしろ、その昔、お遊びでRedHatをインストールした経験があるのみ、
SSHのイロハから学ばないと、とてもではないけど無理なレベルのようですね。
SMPDサイト内の関係する2つのスレッドの内容も???ですので、推して知るべしでした。

とは言え、折角のyoさんのアドバイスと投資を無駄にもできず、ネットをいろいろ調べた結果、
Puttyによるシリアルのコンソール設定にやっと漕ぎつけました。.....


この後、悪戦苦闘されたが、何とかapuにArchlinuxインストールは出来ました。この時の、僕のアドバイスです。

apuはオーディオ用に最適のハードだと思います。ただ、情報が
少ないので、使い手が少ないのは残念ですね。
SMPDのx86_64 AoEスレッドであれだけのユーザが現れ、aoe専用の
イメージまで公開されたのにはビックリしました。また、xxxxさん
まで入っていただけるとは。大歓迎です。

まあ、高音質ソフトの究極を追求するのがsmpd aoeですから、それに
対応するフロント側ハードとしてはapuしかないということだと
思います。

対応する音楽再生ソフトはlightMPDだけだと思います。かなりの
高音質ソフトですので、お勧めしますが、インストールは、結構、
大変です。
ただし、人気ソフトなので情報は一杯あります。僕のサイトでも
何度か取り上げたことがあります。

自力で再生ソフトをインストールして使うというのであれば、
arch linuxをお勧めします。これが一番音がいいし、インストールは
意外に簡単ですから。
archのインストール方法については、僕のサイトに、最近、
「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする」という記事を
書きました。これと
smpdフォーラム x86_64 AoE -> ArchLinux用イメージへの
音楽ソフトの組み込み方
を参照すれば、いろいろ対応出来ると思います。
僕のサイトの掲示板の関連する記事も参考になると思います。

一番音が良く、簡単なのは前回ご紹介した方法ですので、
ラズパイ4をお持ちであれば、取り敢えず、それで試すのが
正解かと思います。

メールを送った順序は逆になりますが、最後のフレーズで「正解かと思います」という内容です。 要するに、「SMPDフォーラムのx86_64 AoE > Arch Linux linux-rt-lts kernel and modulesスレッドからArchLinuxイメージをダウンロードし、使うのが一番簡単ですよ」と返信しました。

x86_64 AoE > Arch Linux linux-rt-lts kernel and modules
のトップ表示されるメッセージの通りやればいいです。

具体的には
最後の方の「イメージ」という項に紹介されているイメージを
etherを使ってUSBメモリに書き込む。
APUにUSBメモリのみセット(SDカードやSSDは空にしておく)。
シリアルとeth0(シリアルの隣)のみ接続。
Puttyを起動(シリアルは115200にして下さい)。
APUの電源を入れる。
Puttyの画面にメッセージがloginの入力行が出るまで待つ。
root(ユーザ名)、raspberry(パスワード)でログインして下さい。
あとは上記のスレッドメッセージの通りにやればいいです。

このメールへの返信です。

この週末少し時間が取れたので、x86_64 AoEのイメージからのインストールを試みました。
それ自体は順調に終わり、お陰様で以下のようにログインできています。


ここから先は、ご教示いただいたyoさんのサイト記事「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする」と、
「smpdフォーラム x86_64 AoE -> ArchLinux用イメージへの音楽ソフトの組み込み方」を熟読しつつ、
1歩ずつ進むつもりです。

しかし、APU2は小さくシンプル、スマートなアルミ筐体に必要な機能をうまく配置し、伝熱シート利用により
ファンレスを実現しながら、AMDのCPUをばらして直付けした、よく考えられたデザインで気に入りました。

smpdフォーラムに直接質問できるレベルには道遠しであり、それまでyoさんにご面倒をお掛けすると思いますが、
懲りずによろしくお願いいたします。


まだやり取りは続くのですが、長くなったので、次回に。

(PC_Audio)   2021/06/20

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Audio over Ether(3)


前回、AoEはOS(ディストリビューション)、ハードに依存しないことを紹介しました。これはFrontEnd部分のことですね。

BackEnd部分はラズパイ4専用です。また大きくハード依存して作成されていますので、動作するかどうかはファームウェアのバージョンにも依存するはずです。新たにハードを用意するのであれば、現時点では、ハードはRev1.2のものにしておくことが賢明です。またメモリは1GBで十分のはずです。ただし、1GBのラズパイ4は入手不能ですから、2GBのものを選べばいいです。

このバックエンド部分ですが、第一回に紹介したようにやっていることはネットワークから受信したデータをDMA転送(alsaバッファへの書き込み)しているだけです。「現状のaoeserverのCPU使用率は44.1KHz再生時に0.15%程度」(現状というのはAoE β12の頃。aoeserverというのは、この場合はバックエンド側処理全体の意味かと思います。)とパパリウスさんが書いていますので、この負荷はほとんど音質に影響しないレベルだと思います。結局、バックエンド側はi2sでdac本体と接続されるddcに近い動きとなるのではないか。だとすると、USB接続のddcと比較すると、差はether接続かusb接続かということになります。

ということに気が付いて、これはetherとusbの音質比較が出来るなと考え、実験をしてみました。
dac以降のハードをまったく同じにして(dacはholo spring 2 キツネです)、usb接続(Matrix Xspdif-2)のfoobar2000(Windows)とether接続(ラズパイ4バックエンド)のx86_64AoEフロントエンド(APU mpd)で切り替えて試聴し、音質比較しました。音楽ファイルはどちらもatom機による自作nasを使っていますので、同じ条件です。この接続でキツネ側は両方のシステムを同時に接続し、インプットボタンで瞬時に切り替えることが出来ます。従って、比較試聴には好都合です。
音の差は明らかで、x86_64AoEの方がかなり良いです。まあ、foobar2000(Windows)とx86_64AoEフロントエンド(APU mpd)の差も大きいので、これだけで、usb接続に問題ありとは言えないと思いますが、興味深い結果でした。実は、AoEではこのような実験がいろいろ行なわれています。何れ、ご紹介したいと思います。

つれづれなるまま、方丈記のように(?)(^^;;;、思いついたことをダラダラと書きつらねていますが、ここらで一まとめ。

AoEの種類について。

種類FEハードBEハードスレッド(カテゴリ)開始時期再生ソフト
①AoE on SMPDrpi4rpi4Audio over Ether2020/11SMPD
②Arch Linux AoErpi4/3rpi4Arch Linux AoE2020/12MPD(upmpdcli),AibumPlayer,shairport,roon,squeezelite
③x86_64 AoEx86_64rpi4x86_64 AoE2021/01同上

三種類のAoEのどれを選ぶかについて。
三つのAoEに音質差はありますが、どれが良いかは好みと環境次第だと思います。聴いて、決めるしかありません。

ハードについては、表の通りで、制約があります。可能なのはラズパイ2台か、x86_64アーキテクチュアのハードのみです。 バックエンドはラズパイ4でのみ動作ですので、ラズパイ4、1台は必須です。
フロントエンドはラズパイ3/4かx86_64ハードとなります。PC Engines社のapuもx86_64互換ハードとなりますので、使うことができます。x86_64スレッドのやりとりから見ると、面白いのは、このapuユーザがx86_64互換ハードユーザの大半ということです。音楽再生に最適なコンパクトなシステムとヘッドレスの強みが評価されているということですかね。

ソフトについては、SMPD以外のものを使うためには②Arch Linux AoEか、③x86_64 AoEを選択する必要があります。問題はどちらもarch linuxであることですかね。
arch linux は linux の中でも使いづらさでは定評のあるディストリビューションです(^^;;;)。そんなもんで定評があったって、しょうがないじゃないかという議論はおいて、「俺、arch linux を愛用している」なんて言ったら、変人だと思われることは確実です。従って、再生アプリケーションのインストールは難事となります。
まあ、AoE開発で活発に議論に参加している猛者たちは、そんなこと全く気にしない輩ばかりですので、音が良いとの定評がある arch linux を使うのは当たり前となるわけです。諦めて、自力で何とかするしかないですね。

さて、ここで脱線。Linuxでのアプリのインストールについて。

guiタイプのlinuxディストリビューションの場合、guiで動くパッケージマネジャーが最初から入っていますので、アプリのインストールは簡単です。サルどころかタヌキでも出来るレベル。パッケージマネジャーでインストールしたいアプリを選択し、インストールボタンを押すだけでインストール出来ます。このインストール方法は各ディストリビューションが用意しているレポジトリというアプリケーションを管理する仕組みを利用しています。

Windowsと異なりlinuxの場合、guiで操作出来る内容の殆どはcuiでも操作可能です。このことはlinux経験者には常識です。そして慣れてしまえば、guiよりcuiの方が楽だというのも、linux経験者なら誰でも知っていることです。従って、彼らはguiを使おうとしない。更には、cuiを嫌がらない。だから、コンソールモードでの操作を恐れない。
全ての操作はguiで行なうことが当たり前のWindowsユーザにとって、こういうことは案外知られていません。Windowsユーザもコンソールを使った操作は普通にやっているわけですから、このことを知れば、案外違和感なくlinuxを使えるのではないかと思います。

という訳で、linuxユーザは、アプリのインストールをパッケージマネジャーを使わず、コンソールから行なうのが普通です。
実は、この点がlinuxでアプリをインストールすることの難しさとなっています。linuxではディストリビューションによってインストールコマンドが異なるのですよね。debian系ではapt-get、redhat系ではyum。当然(?)、archでは違っていて、pacmanとなります。
guiであれば、多少の操作の差異は吸収可能ですが、上記のようにコンソールコマンドが違うのは困る。Windowsユーザは途方に暮れるということになります。

ここで脱線はストップ。本線に戻します。
課題は arch linux で音楽再生アプリをどうインストールするかでした。となれば話は簡単。正義の味方。pacmanの登場です。
何だこの名前は言われそうですが、パッケージマネジャーを略せば、パックマンというわけですね。パクパク、敵を食いまくるゲームの主人公とは何の関係もないようです。

例えば、mpdのインストールであれば

pacman -S mpd mpc ncmpc

「-S」というオプションは、その後に続く、オペランドで指定したソフトをインストールするという意味です。
これだけでmpdに関連するソフトは全て自動的にインストールされます。簡単でしょ。
pacmanはパッケージのインストール以外にパッケージの削除(-R)、パッケージのアップグレード(-Syu)、パッケージ・データベースに問い合わせ(-Ss)、パッケージリストの更新(-Syy)、などの機能を持ちます。詳しい説明はここ(Pacman arch linux)を参照して下さい。

この他、リポジトリに存在しない’ローカル’のパッケージ (例: AUR のパッケージ) をインストール機能はよく使いますので、知っておく必要があります。

pacman -U /パス/パッケージ名-version.pkg.tar.xz
または
pacman -U http://www.example.com/repo/example.pkg.tar.xz


最後のフレーズとコードの引用を除いて、ここまでが動かしたいアプリがリボジトリにパッケージとして登録されている場合のインストールの仕方です。おサルでも出来るレベルですね。これだけなら、誰でもが arch linuxユーザとなれるわけですが、そうは問屋が卸さない。ここから、難所が待ち構えています。

ここで、この難所の見取り図です。Linuxでのアプリのインストール方法。分類方法の出所はここです。「【パッケージ管理システムとは?】Linuxでのパッケージ管理の使い方まとめました」というタイトルで、大変分かりやすく、まとめられています。ご一読をお勧めします。

インストール方法種類debian系redhat系arch linux
①リボジトリからapt-getyumpacman
②バッケージからdpkgrpmpacman -U
③バイナリファイルからtar -jxf同左同左
④ソースコード(ビルド)から./configure, make install同左makepkg

arch linuxの場合「④ソースコード(ビルド)から」は「②バッケージから」と組み合わされていて、④で作成されたパッケージを②のpacman -Uコマンドでインストールするという形をとります。AUR のパッケージとはこの意味です。
AURについては以前に「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(4)」でご紹介していますので、そちらを参照して下さい。インストールの仕方も解説してあります。

AoE on arch linux で動く音楽再生ソフトのインストール方法は次の通り分類できます。

  • ①リボジトリからインストールするもの : mpd、shairport-sync
  • ③バイナリファイルからインストールするもの : roon、AlbumPlayer
  • ④ソースコード(ビルド) + ②バッケージからインストールするもの : upmpdcli、squeezelite

この中で、mpd、upmpdcli、AlbumPlayerについては、「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(3)」と「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(4)」でご紹介しています。その時はlinuxのインストール経験者を前提にコマンドを並べただけでしたが、今回の内容と合わせて読んで頂ければ、Windowsユーザでも、やり方がお分かり頂けるかと思います。

こうやって分類してみると①リボジトリからインストールするものが二つだけと案外少ないですね。
③バイナリファイルからインストールするものの場合、ライブラリの組み込みはユーザ管理となるわけですが、Alsa位だから問題にならないということでしょうか。roonの場合はインストーラーが同梱されているので、そこで注意すべき点は解決されるという方式なのでしょう。AlbumPlayerについては「怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(3)」にインストール時の注意事項は補ってあります。
④ソースコード(ビルド) + ②バッケージからインストールするものはupmpdcli、squeezeliteですが、多少マイナーなソフトだと、この扱いになるのでしょか。こちらの方が開発側から見ると管理は楽でしょうから。
aurではパッケージのビルド方法が書かれたファイル (PKGBUILD) がまとめて置かれており、makepkg を使ってソースからパッケージを作り、生成したパッケージを pacman でインストールすることができます。 従って、PKGBUILDにより簡単にソフトをパッケージとして管理することが可能になります。

最後にインストール後の難所について。アプリケーションの設定に関してです。

音楽再生ソフトのアプリの設定についていえば、WindowsでもLinuxでも大きい違いはないと思います。
ドライバ、音量、音楽ファイルの在り処、データ変換など設定する内容は同じようなものです。Windowsではこれらの設定はGUIで行なうことになります。ところが、Linuxの場合、GUIでも行なえますが、conf(設定用)ファイルを直接書き換えて設定することが多いです。これにWindowsユーザは面食らい、難所となるのですよね。
まあ、これは「そういうものだ」と諦めて、慣れるしかないです。
Linuxの場合、これらの設定方法については丁寧なドキュメントがあるのが普通ですから、我慢して英文を読みましょう。

逆に、この世界になれると、アプリが動かないとなると、まず設定ファイルを捜し、調べてみるのが癖になります。設定ファイルはテキストファイルですし、コメントがあり簡単に読むことができます。マニュアル調べているより、直接、設定ファイルを覗いた方が速いのですよね。

(PC_Audio)   2021/05/25

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Audio over Ether(2)


5月11日付けの毎日新聞、社会面、見出しに。

麻生大臣認知「かなり以前」

とありました。
ビックリしましたね。
「やっぱり、あの暴言の数々は認知症が原因だったのか。凄いスクープ。どうやって裏を取ったのだろう」と思いました。
二段目の見出しを読んで、謎はとけました。

赤城ファイル存在。時期明示せず。

「何だ当たり前じゃないか。そんなこと誰でも推測できる。」ですね。

しかし、もう一度見出しを読み直して、考えました。これは整理部記者の何がなんでも記事を読ませようという悪巧みじゃないだろうか。だって、「麻生大臣はかなり以前から認知していた」という文章をを短縮するのだから、普通なら、素直に不要な言葉はとって「 麻生大臣以前から認知」ですよね。それをわざわざひっくり返して、しかも「かなり以前」を括弧で強調し、『 麻生大臣認知「かなり以前」』」としたわけだから、わざと誤解させ、記事に注目させようとしたに違いない。
現に、翌日、同じ記事の続報の見出しは「麻生大臣認識かなり以前」と変わっていました。認知を認識に変え、かなり以前の括弧をとったわけですが、きっと前日の記事で誤解した読者から苦情が殺到したから、見出しを変えたのでしょうね。

さて、本題。

タイトルを変え、「on SMPD」をとりました。その理由が今回紹介する内容の勘どころとなります。

ネット仲間にAoEを使ってみたいが、どうすれば良いかと質問され、Arch Linux AoEをお勧めしました。理由は彼の構成が、 ①ラズパイ4×2であること、 ②roon使いであること、 でした。
Arch Linux AoE であれば、roonをインストールし、動かしたというような報告がSMPDフォーラムのスレッドに上がっており、簡単に試せそうでした。

その時のやりとりです。
まず、ネット仲間からの音が出ないのだけど何故かという質問。

> これは、USBに書き込み、起動したが、いつまで経っても
> ネットワークで認識できなかったという意味でしょうか。

ネットワークで認識はしました。SSHで入れます。ところが
smpdの例のボインのお姉さんの画面が出ません。
そこは無視してSSHでRoonをインストールしました。
こうするとRoon側でsmpdを認識します。ところが残念ながら
音は出ません。

これに対する僕の返信。

なるほど。roonのインストールは正常に終了しており、後は音を出す
ためのチューニングだけという意味ですね。
ということはLinuxの問題ではなく、aoe/roonの使い方の問題と
なります。

誤解される方が多いのですが、あのボインのネイチャンはsmpdの
動作とは関係がありません。ympdというブラウザでsmpdを
起動した時に表示される初画面です。

極端な言い方をすると、AoEはsmpdをベースにしていますが、
ラズパイ一台で動くsmpdとは違うものです。


このやりとり、パソコンを使った音楽再生に慣れているが、linuxはあまり使ったことがない、イメージをSDカードに書き込んで、起動する形で使用する、という方々がAoE導入で躓く典型的パターンですね。
これらの方々にとって、SMPDは「ボインのお姉さん」として認識される。まあ、音の良さも然ることながら、あのネイチャンが印象に残るというわけです。

ここで、ちょっと脱線。GUIとは何かです。
人がソフトとは何かを理解するのはGUIによる部分が大きいです。例えば、エクセルであれば、あの表計算の画面。foobar2000であれば、あの無愛想な状態表示画面。

プレーヤソフトの場合、GUIは必須です。再生の開始、停止、再生中の曲の表示、状態の表示、再生のための各種の設定などをグラフィカルに操作させることになります。更に進んだものになれば、roonのように、タグ情報とインタネットを組み合わせ、何でも有りの表示まで出来るようなソフトも存在します。
しかし、世の中にはGUIの無い音楽再生ソフトというものが存在します。WindowsだとJPLAYがそうですね。V6ではasioドライバとして動作し、GUIは設定画面だけでした。V7では、DLNAレンダラー&専用サーバとして動作し、DLNAネットワークのGUIとなるコントロールポイントについては、既存のものが自由に使えるという方式でした。

Linuxでも同じようなソフトが存在します。SMPDの元になったMPDです。

MPDという略語を辞書で調べると Metropilitan Police Office と出てきます。「うーむ、あれは警視庁であったか」という悪い冗談はおいて、これは Music Player Daemon の略です。Daemonというのは一般には悪魔のことですが、Linux用語では、「バックグラウンドプロセスとして継続的に実行されるプログラム」のことです。まあ、警視庁も裏に隠れて人々を守るという意味ではデーモンなのですかね(^^;;;。
ギリシャ神話のデーモンには悪魔はいないですから、いいのかな。

このバックグラウンドプロセスという部分が重要です。要するにユーザーインターフェースをもたないわけです。JPLAYといっしょですね。ユーザーインタフェース無しで、どうやって選曲し、再生を開始したり止めたりするか。
LinuxではDaemonはサーバーとなり、手下となって働く子分(クライアント)を作ることができますので、GNOMEとかCantataというGUI担当の子分を用意します。これらの子分は進化してWindowsでも動いたりします。

さて、SMPDですが、高音質化を狙い、このMPDに手を入れ(ソースコードを変更しているという意味です)、カスタマイズされたシステムです(カーネル部分にも手が入っているはずです)。従って、同じようにDaemonとして動くわけですから、そのままではGUIはありません。このため、予め専用のGUIを用意し、デーモン本体と一緒にイメージに組み込み、提供するという方法をとっています。このGUIがあの「ボインのネイチャン」の正体です。

「ボインのネイチャン」はympd(websocketsとbootstrap.jsを使用してCで記述されたWebGUI)と呼ばれるWebGUIクライアントにより表示されます。このympd部分はsunatomoさんによって拡張され、今では、Volumioなどと比較しても、見劣りしない高機能なものとなっています。

脱線はここまで。何故、脱線させたかというと、SMPDとAoEの関係を理解するためでした。

SMPDというのは

  • MPD(高音質化とympd対応のため改造)
  • ympd(SMPD対応のための拡張)
  • Linuxスクラッチカーネル(高音質化のため改造)

から構成されています。
昨年の11月に公開されたAoEの初期版は、このSMPD1.0.10をベースにして、新規にAoEが組み込まれました。
この結果、SMPDとAoEが一体のものという誤解が生まれのですが、両者はそれぞれ独立した、全く関係のないシステムです。
現に、AoE on SMPDが登場した後、12月にはラズパイ用のArch Linux AoEが公開されています。これは、ympd以外のSMPD関連の素材を使わずに構成され、再生エンジンとしてはMPDがそのまま使われました。その後、GUIについてはympdによるSMPD対応のための拡張部分が追加され、再生エンジンとしては roon なども使えるようになりました。

AoE on SMPDとArch Linux AoEの違いは、同じラズパイを使っているため、分かりにくいのですが、AoEとは何かを理解するためには重要です。
両者はバックエンド側は同じソフトを使います。ラズパイ4専用です(ハードがRev1.4の場合は対応ファームウェアや設定に注意が必要かもしれせん)。
両者のフロント側は異なるソフトです。AoE on SMPD はSMPD1.0.10をベースにしてモジュールの追加、入れ換えで作成しますが、Arch Linux AoE はイメージで提供されます。このイメージは上記のSMPD異なる形で構成されています。

  • MPD(基本的にオリジナルのままで、ympd起動のみ対応)
  • ympd(DBの設定など一部のみ拡張)
  • Arch Linuxカーネル(AoE β3セットアップ済み、カーネルのバージョンは5.4.74改造無し)
  • RPi3向けのRTカーネルを同梱

という具合です。
要するにAoEを、様々な再生ソフトから使い易くするため、独立させ、標準のArch Linuxカーネルにセットアップしたものとなります。また、ラズパイ3用のrtカーネルを同梱させ、入れ換えて、RPi3でも使えるようにしています。先程、AoEとSMPDは別ものと書きましたが、これでご理解いただけるかと思います。

AoEはラズパイ以外の環境にも展開可能で、1月にはx86_64互換ハード環境で動かすためのプロジェクトが開始されています。こちらはもともとSMPDが動く環境ではありませんので、再生環境は大幅に拡大され、MPD以外にroon、squeezelite、AlbumPlayer、Spotify(shairport-sync)などのインストール方法が公開されています。

だらだらと書いてきましたが、ここまでの話は、2台構成のフロント部分に関する解説ですね。このあたりを整理して記述しないと、『 麻生大臣認知「かなり以前」』」と同じことになるので(^^;;;、今回はここで止めて、次回に続けます。

(PC_Audio)   2021/05/15

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Audio over Ether on SMPD


この記事の最初のタイトルは「x86_64ハードのためにArchLinuxをインストールする(5)」でした。 カーネルのビルドの話題を取り扱うつもりでした。しかし、「何故、カーネルのビルドなのか」の理由を説明しないといけない。
アプリケーションのインストールに関してもそうだったのですが、「x86_64ハードのためにArchLinuxをインストールする」のは、怪造カードだけでなく、Audio over Ether on SMPDもターゲットにしたいからです。
このため、Audio over Ether on SMPDについて紹介を始めたら、ArchLinuxカーネルビルドの話題に辿り着く前に一回分の記事が終わってしまいました。という訳で、タイトルを変えました(^^;;;)。

「Audio over Ether on SMPDとは何か ? 」という方が多いと思います。
Audio over Ether(以降、AoEと略します) というのは高音質化を目的としたネットワークオーディオの全く新しい試み(実験)です。
昨年の11月頃にsmpdの新展開としてスタートしました。ソフトの公開とサポートはsmpd R&D クラブのAoE関連スレッドで行なわれています。これらのスレッドは外部に非公開となっています。従って、AoE on SMPDはネットワークオーディオとしては画期的な試みなのですが、外部にはほとんど知られていない状況です。
これだけ素晴らしい試みが外部に知られていないというのは残念に思います。というわけで、今回は盛大に脱線し、AoEの紹介から始めたいと思います。

smpdはご存じのようにラズベリーパイを使い、linuxを使って動く音楽再生ソフトです。みみず工房では何度か話題にしてきましたので、ご存じの方も多いでしょう。過去の記事についてはここを参照して下さい。
リンク先の記事は2年前のものです。この頃からlinuxのカーネルのソースコードに手を入れ高音質化を図るというアプローチが開始されました。これも画期的試みだったわけです。そのビックリ度合いを示すために当時の記事の一部を引用してみましょう。

ビックリしましたね。このソフト、前代未聞のとんでもない地点まで行って、開発を続けているようです。「これは放ってはおけない」と考え、あわてて会員登録し、たかじんさんの最新i2sカードをgetして、試してみました。

で、結果が冒頭のセリフ。「さらばJPLAY、さらばWindows」、そして「こんにちはSMPD、こんにちはLinux」というわけです。凄いですね。このソフト。JPLAYfemtoも真っ青というレベル。ソフトでここまで出来るとは驚きました。


この「さらばJPLAY、さらばWindows」というセリフは某氏を大分刺激したようで、後の大事件に繋がるわけですが、それを話し出すと脱線が止まらなくなるので(^^;;;、封印します。
というわけで、今回は二度目のビックリとなります。前回はカーネルに手を入れ最適化を図るアプローチが画期的だったわけですが、今回はネットワークアプローチです。

ネットワークアプローチとは何か。

まず音楽の再生機能の分担を、i2s接続で音源と繋がるラズパイと、外部の音楽データを読み取り、再生データとして加工し、音源に繋がるラズパイに送り出すパソコンに分けます。ここまでは従来のパソコン二台を使った負荷分散システムと同じです。JPLAYやlightMPDでも同じような構成が可能です。

ユニークなのはここからで、この時、音源に繋がるラズパイはネットワークから再生データを受け取り、i2s音源に送り出すだけというシンプルな機能になります。ここをカーネルに手を入れ、徹底的に軽量化(低負荷)します。
そのやり方がとてもユニーク。カーネルに手を入れ、ラズパイi2sハードとネットワークの特性をとことん活かした対策を取ろうというものです。

以下の紹介はsmpd R&Dクラブの「Audio over Ether」スレッドのパパリウスさんの解説文をそのまま引用し、それに僕が注釈を加えるという形で行います。引用についてはパパリウスさんの許諾を得ています。 またパパリウスさんからの引用と僕の解説の区別を分かりやすくするため色と仕切りを付けます。

=====

低負荷の追求

I2Sは一般にノイズに脆弱で、引き回せる距離は最大でも10cm程度と言われています。ノイズの影響を避けるには、I2Sシグナルの伝送経路は極力短くするのが望ましいでしょう。


その一方で、I2Sシグナルの発信元となる機材はノイズ源でもあります。S/PDIFやUSBを受けるDDCも、I2Sを直接出力するシングルコンピューターも、マイコン/FPGA/CPUを高速で駆動しノイズを放出するノイズ源であることには変わりありません。経路を絶縁し、発信源を金属板で遮蔽するなどのEMC対策を行って、信号線・DACチップ・クロックへの影響を極力抑えることが望ましいでしょう。

さてここで、別のアプローチを考えてみます。CPUやメモリの負荷を抑えることでデジタル処理系が放出するノイズ量そのものを減らすことができるのではないでしょうか。HAT基板のようにノイズ源とD/A処理系が隣り合いEMC対策が難しい場合でも、このようなアプローチならば実践できそうです。

デジタル処理系の負荷をどこまで抑えることができるのか。負荷低減を突き詰めた先に、果たして音質向上が得られるのか。

それを確かめてみたいという探究心がAudio over Etherの出発点です。

=====

これが、ぱパリウスさんのAoE解説の冒頭の部分です。最後のフレーズで作者のAoE開発の意図が明確に書かれていますね。
続いて、ラズパイ、i2s接続を前提にして、どう負荷低減するか。そのユニークなアプローチの解説です。

=====

Remote Direct Memory Access

Raspberry Pi 4のSoC(System on a Chip)であるBCM2711には、I2S出力機能(シリアライザ)が実装されています。

このシリアライザからI2Sシグナルを出力するのに最低限必要な処理は次の2つだけです。


- DMAバッファからシリアライザへのDMA転送を指示する。
- DMAバッファにPCMデータを書き込む。

ここでのDMAバッファとは、俗に言うALSAバッファを指しています。


DMA転送の指示には、コントロールブロックというデータ構造を用意してDMAコントローラに読み込ませる必要があります。
このコントロールブロックはDMAバッファのメモリアドレスと次に処理するコントロールブロックのアドレスを保持しており、DMAコントローラはこのコントロールブロックを次々と読み出しながらDMA転送を行っていきます。

DMA転送の指示は再生開始前に1度だけ行えばよく、再生負荷に占める割合は大変小さなものです。

=====

以上が、前提となるラズパイの技術仕様。テクニカルな核心の部分です。
ラズパイを使ったi2sの再生は再生開始時の一回のデータの転送だけで済む。従って負荷は極めて小さい。
この特長を最大限利用しようということです。
続いて、その利点を、どういう具合に、活かすかの解説です。

=====

さて、負荷を低減するために音声ファイルのデコードとPCMの再生を2台のマシンに負荷分散することにしましょう。ここではデコード役をフロントエンド、再生役をバックエンドと呼称することにします。

このような負荷分散構成では、フロントエンドからバックエンドにネットワーク経由でPCMデータを受け渡すことになります。


もしバックエンドが受け取ったPCMデータをそのままDMAバッファに書き込むことができれば、再生に必要な処理は全て完了することになり、最もシンプルな動作となりそうです。

=====

aoeはパソコン2台による構成を前提としていますが、lightMPDやJPLAYといった負荷分散を目的とした従来の2台構成方式を更に発展させた考え方をとります。
最後のフレーズの「バックエンドが受け取ったPCMデータをそのままDMAバッファに書き込む」という部分がAoEの負荷低減方法のボイントです。「余分な処理を全てショートカットし、必要最低限にする」ということです。 以下、その手法の説明です。

=====

しかし、通常のネットワーク処理では、LAN経由のデータがアプリケーションに届くまでには多くのステップを経由する必要があります。


1).まず初めにネットワークインターフェース(つまりLANポート)がデータを受け取ると、ハードウェア上のキューが一杯にならないよう、ハードウェア割り込みによってカーネルに通知を行います。

2).呼び出しを受けたカーネルは、キューからデータをコピーしてカーネル上のバッファに書き込みます。

3).そして、カーネルのネットワーク実装(TCP/IPスタック)が順序制御やエラーチェック、再送制御を行い、アプリケーションに受け渡せるよう準備を行います。

4).準備が完了するとアプリケーション(例えば音楽再生ソフト)はカーネルから通知を受け取り、カーネルバッファからデータをコピーしてアプリケーション側で用意したバッファに書き込みます。あと少しです。

5).ここまでくれば再生ソフトはバッファ上のデータを読み取って内容を解析することができます。PCMデータ部分を切り出してALSAバッファにコピーすれば再生は成功です。

負荷低減のために実現したいアイデアは、2)の段階でPCMデータだけを選別し、直接ALSAバッファに書き込もうというものです。

物理メモリへのデータコピーは1度きり。これがそのままシリアライザにDMA転送されるというわけです。これが実現できれば、余計なデータコピーは一切不要で、read/writeシステムコールの呼び出しも不要、コンテキストスイッチも不要、CPUキャッシュが大量のデータで汚染されることもありません。負荷低減という観点では良いこと尽くしです。CPU/メモリの稼働を最小に留めることができるでしょう。

=====

以上を図示するとこういう具合になるようです(作者が作成された図です)。

=====




利便性を考慮し、PCM以外のパケットについては2)以降のステップを通常通り経由するよう制御します。ssh接続も出来ないというのは不便ですからね。

=====

分かりやすいでしょ。ネットワークからデータを受け取った時点でそのままDMA転送用のALSAバッファに書き込んでしまうという訳です。

=====

このようなAudio over Ether実装は、リモートマシンのアプリケーションに直接データを転送するRemote Direct Memory Access(RDMA)の思想と類似性を見出すことができます。

それは、RDMAの目的であるゼロコピーを実現したものだからです。

Audio over Etherは、音楽再生に特化したRDMAのようなもの、、、と表現できるかもしれません。

=====

以上で引用はお終いです。今回はきりが良いのでここで終わります。最後まで脱線しぱっなっし。次回も脱線は続くです(^^;;;。

(PC_Audio)   2021/05/03

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怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(4)


今回はmpdとupmpdcliのインストールです。例によって、まず難所の案内から。

mpdの難所は設定ファイル(mpd.conf)、upmpdcliの難所はaurですね。

難所をクリアする方法です。
mpd.confについてはupnpで動かすための標準のものを用意し、コピー&ペーストで対応するのが簡単です。お勧めはsmpd-aoeのrpi4 arch版フロント用のものがupnpで使ええますので、これを使います。

次にaur。こちらは aur とは何かを理解するです。
aurとは何か。一言でいえば、ソースからパッケージをインストールする仕組みです。PKGBUILD という指示書を使って、makepkg コマンドによりパッケージを生成することができます。arch linux では makepkg はpacman でインストールできます。 ここを参照して下さい。
実際の手順は次の通りです。

  • aurでパッケージをインストールするにはソースプログラムをコンパイルする開発環境が必要です。事前にこのインストールが必要です。
pacman -Syy
pacman -S base-devel xmlto docbook-xsl kmod inetutils bc wget unzip
pacman -S glibc git make autoconf automake libtool pkg-config patch
  • makepkgはrootユーザで実行することはできません。一般ユーザーでログインする必要があります。rootで適当な一般ユーザを登録し、そちらで作業する必要があります。また登録した一般ユーザはroot権限の必要なコマンドを実行できるようにしておいた方が便利です。詳しくはこちら(一般ユーザの登録)を参照。
useradd yo
passwd yo
nano /etc/sudoers
yo ALL=(ALL) ALL
mkdir /home/yo
chmod 777 /home/yo
この後yoでログイン。
  • archlinux aurのサイトに行きます。
  • トップページの画面右上に検索ボックスがありますので、インストールしたいパッケージ名を入力。検索します。
  • Git Clone URLの内容を以下の通りダウンロード。
git clone /URLの内容
  • ダウンロードした内容がパッケージ名のディレクトリに展開されているので、そこに移動。
cd /パッケージ名
  • PKGBUILDが存在することを確認して、インストール(-s を指定し、必要なパッケージは自動的にダウンロードするようにします。詳しくはこちらを参照)。
ls
makepkg -s

このやり方がどこにも書いてないから、「aurってどう使うの ?」となるのですよね。

以上で難所の攻略方法は終わりです。これさえ分かれば、それ以外は「サルでも」のレベルです。
ということでスタート。

MPDのインストール

こちらはインストールはpacmanを使えますので、簡単です。

pacman -S alsa-utils alsa-firmware alsa-lib alsa-plugins
pacman -S mpd mpc ncmpc

ncmpcは使わないのなら不要です。
インストールすると仮のmpd.conf が作成されていますが、削除し、upnp用のものを作成し直します。

rm /etc/mpd.conf
nano /etc/mpd.conf
以下の内容をコピー&ペースト
# volume setting (hardware, software, none)
#mixer_type "none"
mixer_type "software"
# Buffer Setting (default 4096)
audio_buffer_size "4096"
# Audio Output
audio_output {
        type "alsa"
        name "alsa"
        device "hw:0,0"
        allowed_formats "*:32:*"
}
# resampler
resampler {
        plugin "soxr"
        quality "very high"
}
# Input
input {
        plugin "curl"
}

# Files and directories
log_file                "/run/mpd/mpd.log"
pid_file                "/run/mpd/mpd.pid"
music_directory         "/var/lib/mpd/music"
playlist_directory      "/var/lib/mpd/playlists"
db_file                 "/var/lib/mpd/mpd.db"
sticker_file            "/var/lib/mpd/sticker.sql"
state_file              "/var/lib/mpd/state"
# Symbolic link behavior
follow_outside_symlinks "yes"
follow_inside_symlinks  "yes"
# misc.
filesystem_charset      "UTF-8"
log_level               "default"
volume_normalization    "no"
replaygain              "off"
auto_update             "no"
restore_paused          "yes"
max_connections         "10"
metadata_to_use         "artist,album,albumartist,title,track,genre,date,composer,performer,disc,label,artistsort,albumsort,albumartistsort"

mpd関連ディレクトリ、ファイルを作成します。

mkdir -p /var/lib/mpd/music/NAS
touch /var/lib/mpd/{database,log,pid,state}

mpdの起動を設定します。

systemctl start mpd
systemctl enable mpd

upmpdcliを使わない場合は/etc/fstabまたはrc.localに音楽ファイルのマウントを設定します。設定方法はお使いになる音楽ファイルにより異なります。また、起動時に音楽ファイルを自動マウントさせるには、/etc/fstabを使うか、systemdにrc.localを有効にさせる設定が必要となります。/etc/fstabを使う方法に関してはここ(Qiita)ここ(arch公式サイト)に情報があります。またrc.localを有効にする設定方法はある程度のlinux知識が必要です。情報を得るには「rc.local arch」をキーワードにしてグーグル検索してみて下さい。

ここでは、僕がとった方法をコマンドだけ提示しておきます。以下のサイトを参考にしました。

nano /etc/rc.local
mount -t cifs //nasアドレス/music /var/lib/mpd/music/NAS 
chmod +x /etc/rc.local

nano /usr/lib/systemd/system/rc-local.service
[Unit]
Description=/etc/rc.local compatibility

[Service]
Type=oneshot
ExecStart=/etc/rc.local
# disable timeout logic
TimeoutSec=0
#StandardOutput=tty
RemainAfterExit=yes
SysVStartPriority=99

[Install]
WantedBy=multi-user.target

Created symlink from /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/rc-local.service to /etc/systemd/system/rc-local.service.
ln -s /usr/lib/systemd/system/rc-local.service /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/
systemctl enable rc-local

reboot

これらの操作は、全くのlinux経験の無い方には、かなり大変な作業なので、音楽ファイルのマウントを飛ばして、次項のupmpdcliのインストールを行い、音楽ファイルのマウントの設定はDLNAに任せる方法をお勧めします。

upmpdcliのインストール

upmpdcliのインストールについてはご本家に情報はあります。インストールに関しても記述はありますが、その記述だけでインストール出来るかたはlinuxの上級者だけでしょう。aurでのインストール時に難所となる部分については解説済みですのでそちらも参照して下さい。

ここからの操作はrootでは出来ません。頭の方で書いたように、rootで開発環境に必要なソフトをインストールし、適当な一般ユーザを作成設定して、そのユーザ名でsshログインし、以下の操作を行なう必要があります。

開発環境
pacman -S base-devel xmlto docbook-xsl kmod inetutils bc wget unzip
pacman -S glibc git make autoconf automake libtool pkg-config patch

libnpupnpのインストール
git clone https://aur.archlinux.org/libnpupnp.git
cd libnpupnp
makepkg
sudo pacman -U libnpupnp-4.0.14-1-x86_64.pkg.tar.zst

ユーザディレクトリに戻ります。
cd ..
libupnppのインストール
libupnpp
git clone https://aur.archlinux.org/libupnpp.git
cd libupnpp
makepkg
sudo pacman -U libupnpp-0.21.0-1-x86_64.pkg.tar.zst
ユーザディレクトリに戻ります。
cd ..
upmpdcliのインストール
git clone https://aur.archlinux.org/upmpdcli.git
cd upmpdcli/
makepkg -s
sudo pacman -U upmpdcli-1.5.11-2-x86_64.pkg.tar.zst
ユーザディレクトリに戻ります。
cd ..

libupnppのmakepkgでlibnpupnpを参照します。upmpdcliのmakepkgでlibnpupnpとlibupnppを参照します。従って、必ずこの順番で操作する必要があります。
次に起動設定。

sudo cp ./upmpdcli.service /etc/systemd/system
sudo systemctl start upmpdcli.service
sudo systemctl enable upmpdcli.service

Asusの怪造カードをarchlinux mpd+upmpdcliで使うためにはボリュームの調整が必要です。上記の設定でボリューム調整はソフトウェアになっています。この状態だとボリュームは最大で再生され頻繁に音が歪みます。

mpc volume 50

位の設定にすれば問題はなくなるようです。

あとは通常のUPNPデバイスと同じ使い方となります。お好みの端末(ios、android、pc)から、ご自由に操作してみて下さい。

(PC_Audio)   2021/04/24

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怪造カードのためにArchLinuxをインストールする(3)


前2回でインテルアーキテクチュアのハードにArchLinuxをインストールする方法を紹介しました。今回は作成したシステムに音楽再生アプリをどうやってインストールするかについて書きます。
今回の書き込みはSMPD R&Dクラブの

ホーム > x86_64 AoE > ArchLinux用イメージへの音楽ソフトの組み込み方

というスレッドに書き込んだ内容そのままです。
完全な手抜きですね(^^;;;。多少、言い訳をします。

一番目の言い訳。
多分、あのスレッドは非会員には非公開ではないかと思います。だから、こちらで公開する意味はあるでしょう。

そして二番目の言い訳。
SMPD R&Dクラブはサイトの運営にlinuxで動くNodeBBというグループウェアソフトを使っているようです。このソフトは掲示板の書き込みにmd(MarkDown)という書式を使っています。
実は僕のサイトも書き込みはこの書式を使っています。マークダウンとは何かとか、使い方についてはリンク先をご覧ください。10年以上前の記事です。だから、楽に出来ると思いました。

ところが、「同じ書式を使っているのだから、そのまま簡単に移行できるのね」と考えた貴方は甘い(^^;;;。マークダウンって、非互換だらけなのですよね。
もともとマークダウンというのはテキストメールの書式を参考に勝手(?)に作られた書式ですから、様々なバリエーションがあり、標準化されたものではありません。残念。手抜き出来ると思ったが、そう楽は出来ません。仕方がないので編集用rubyのスクリプトを弄りました。code表示を行なうためです。
今までは、preタグを使っていたわけですが、やっぱり、codeタグを使い、表示方法も変えて、NodeBBに合せた方が分かりやすそうです。

と、ここまで書いた部分を読み直して、言い訳が言い訳になっていないことに気がつきました(^^;;;。まあ、どうせ脱線させているだけなのだから、いいか。

AlbumPlayerのインストール方法

まず、一番簡単なアプリから。AlbumPlayerのインストール方法です。ウェブで操作するAPlayer本体とUPnP対応のrendererは別にインストールします。
「一番簡単」と書きましたが、これはインストールが一番簡単という意味です。特に、レンダラーだけインストールという方法が取れますので、DLNA環境があれば、取り敢えず音を出すためであれば、AlbumPlayerのレンダラーをインストールするのが一番簡単です。ただし、怪造カードを動かすためだと、とんでもない罠が仕掛けられています。詳細は後述します。

例によってここで少し脱線。

これから紹介するarch linuxへのインストール方法のやり方は簡単です。分かってしまえば、サルでも出来るというレベルですね。では、何故、サルたちがarch linuxに近づいてこないのか。

理由は単純でこの「分かってしまえば」という部分が分からないからです。要するに、必ずそのままでは上手くいかないワナが仕掛けれていて、そのワナをクリアする方法を見つけることが出来ないわけです。クリアする方法はどこにも書かれていません。archの奥義を知るグルのみぞ解読出来るという構造になっています。その構造の典型がarch関連のwikiページですね。

日本語で書かれているが日本語の意味が分からない。日本語が悪いわけではなく、英語で読んでも同じことです。要するに核心となる技術的な事柄の解説が書かれてはいるが、巧みにサルには分からないような記述になっているので、サルは分からなくなるのです。
という訳なので、以下の紹介でこの核心部分をなるべくサルにも分かるように補いながら、しかし、他の部分は飛ばして簡略に解説して見たいと思います。
但し、核心部分とは僕の考える核心なので、独断と偏見だらけとなります。相変わらず、分からないものは分からないかもしれませんね(^^;;;。

AlbumPlayerのインストール方法で核心部分とは

cd /usr

です。
この操作コマンドはカレントディレクトリを/usrというディレクトリに移動しているわけです。
何故カレントディレクトリの変更をするかが核心部分となるわけです。その説明の前にAlbumPlayerをインストールするためのコマンドを並べます。

pacman -S wget
cd /usr
wget http://albumplayer.ru/linux/aplayer64.tar.gz
tar -zxvf aplayer64.tar.gz
cd aplayer
cp aplayer.service /etc/systemd/system/
systemctl start aplayer
systemctl enable aplayer

systemctl status aplayer

最初のpacmanはその次のダウンロードためにwgetをインストールするためです。その次に直ぐディレクトリの移動をします。理由は、wgetした次のtarが、/usr配下にダウンロードしたアーカイブの内容を、展開するためです。
アーカイブの中味はカレントディレクトリのaplayerというディレクトリが作成され、その下に展開されます。./aplayer直下の内容は以下の通りです。

[root@arch usr]# ls -l aplayer
total 6296
drwxrw-rw- 34 yo yo    4096 Jan  9 10:08 Radio
-rwxrwxrwx  1 yo yo 6278592 Jan 17 16:10 aplayer
-rw-rw-rw-  1 yo yo    5002 Aug 10  2020 aplayer.css
-rw-rw-rw-  1 yo yo     138 Mar 18  2020 aplayer.desktop
-rw-rw-rw-  1 yo yo   27096 Sep 20  2020 aplayer.html
-rw-r--r--  1 yo yo   46750 Mar  9  2018 aplayer.js
-rw-rw-rw-  1 yo yo     183 Mar 18  2020 aplayer.service
-rwxr-xr-x  1 yo yo      43 Mar 18  2020 aplayer_root.sh
drwxrwxr-x  3 yo yo    4096 Apr  3 01:34 cfilters
-rw-rw-r--  1 yo yo     668 Mar 18  2020 config.dat
drwxr-xr-x  5 yo yo    4096 Sep 21  2020 dimas
drwxrwxr-x  2 yo yo    4096 Apr  3 01:34 filters
drwxrwxr-x  2 yo yo    4096 Apr  3 01:34 img
drwxrwxr-x  3 yo yo    4096 Apr  3 01:34 light
-rwxrwxr-x  1 yo yo   10632 Mar 18  2020 pulseoff
-rw-rw-rw-  1 yo yo   25138 Mar 18  2020 zepto.min.js

ご覧ように、ここに AlbumPlayer を実行するための要素が集められているわけです。
この中の aplayer.service は/etc/systemd/system/に置く必要がありますので、./aplayerにcdしてcp(コピー)しているわけです。

ちなみに、aplayer.serviceの[Service]は以下の通り設定されています。

[Service]
Type=forking
WorkingDirectory=/usr/aplayer
ExecStart=/usr/aplayer/aplayer
StandardOutput=null

/usr/aplayerがWorkingDirectory、/usr/aplayer/aplayerが実行プログラムというわけです。これ以上の説明は不要でしょう。

お使いのウェブから次のようにアクセスします。

ip-address:7778

後は通常の操作と同じです。以前の記事を参照して下さい。


レンダラーのインストール方法

次にrendererのインストール方法。レンダラーしか動かさないという場合はこちらだけ実行すればいいです。
やり方は本体部分のインストールと同じです。/usr/aplayerが/usr/rendererに変わるだけです。

cd /usr
wget http://albumplayer.ru/linux/aprenderer64.tar.gz
tar -zxvf aprenderer64.tar.gz
cd aprenderer
cp aprenderer.service /etc/systemd/system/
systemctl start aprenderer
systemctl enable aprenderer

systemctl status aprenderer.service

これでレンダラーとしての動作は開始されています。お使いの端末から操作して下さい。
レンダラーの設定はウェブから次のようにアクセスします。

ip-address:7779

後は通常の操作と同じです。以前の記事を参照して下さい。

Asusの怪造カードをarchlinux AlbumPlayerで使うためにはボリュームの調整が必要です。ディフォルトの設定ではボリューム調整は無しになっています。この状態だとボリュームは最大で再生され頻繁に音が歪みます。
これを有りに変更し、ボリュームを70%位にする必要があります。



設定ボタン(下の方にある歯車マーク)を押し、ダイアローグ画面を表示させます。上図の赤丸で示したように変更して下さい。

ここで終わらせようかと思いましたが、それじゃ「突っ込みが甘い」とのご批判を受ける可能性がありますね。実はasusの怪造カードはここからが大変でした。
archだと、何故か簡単にはボリュームの変更が出来ないのですよね。上記の通りボリューム有無設定はあるのですが、その後が大変。
まず、ボリュームを調整する機能が見つからない。AlbumPlayerの場合はweb画面にあります。これは簡単にみつかりした。調整もバーのコントロールで可能ですから問題なしです。ただ、このweb画面は選曲の操作性が悪いです。とても常用する気になりません。

ということで、renderer版を使うことになります。AlbumPlayerと同じようにボリューム有無設定はあり、変更は簡単です。
問題はボリューム量の指定をするweb画面がないこと。コントローラー(android端末)から操作すればいいのか考え、捜しましたが、見つかりません。
しょうが無いので、alsamixerを動かしたが、デバイスが無いというエラーになります。最後の手段、AlbumPlayer側で操作してみたが、renderer側には反映されません。
結局、コントローラーを mconnect -> BubbleUPnP -> fdata と変更して、こういう画面を見つけました。



これで何とか操作できました。50%以下にすると歪みの無い綺麗な音で聴くことが出来ました。

この歪みですが、ビット数の変更処理のバグでしょうね。まあ、asusに怪造カードの為に調査を要求することも出来ないでしょうから、諦めるしかなさそうです。

(PC_Audio)   2021/04/11

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