移調の限られた旋法

SUB:RE:【Q】移調の限られた旋法
よこちゃん(さん)、こんにちは。

もっと適任の方がいらっしゃると思いますが、とりあえず解説します(ご存じの方
、間違っているところは訂正してくださいね。出典は柴田南雄さんの西欧音楽史4
です)。

12音平均律で7音の長音階は12回の移調(音階内の音高関係を変えずに出発す
る音の高さを変えること)が可能ですね。ところが、例えば、6音からなる全音音
階(C D E F# Ab Bb)では、この移調が1回しかできません。つまり、全音音階で
移調可能な音階は元の音階を半音上げた C# D# F G A B だけで、もう半音あげる
と、D E F# Ab Bb C となり、幹音の構成が最初の全音階と同じとなってしまうの
で、移調出来ないことになります。

このような音の並び(これをメシアンはモードと呼んでます)を移調の限られた旋
法(Les modes a transpositions limitees 略してM.T.L.)といい、12音平均律
では7種類の旋法があります。具体的には

                                           移調可能  音の数  オクターブを
                                           回数              等分する数
M.T.L.1   C  D  E  F# Ab Bb C                2         6        6
           全 全 全 全 全 全
          |--|--|--|--|--|--|

M.T.L.2   C  Db Eb E  F# G  A  Bb C          3         8        4
           半 全 半 全 半 全 半 全
          |-----|-----|-----|-----|

M.T.L.3   C  D  Eb E  F# G  Ab Bb B  C       4         9        3
           全 半 半 全 半 半 全 半 半
          |--------|--------|--------|

M.T.L.4   C  Db D  F  F# G  Ab B  C          6         8        2
           半 半 短3半 半 半 短3半
          |-----------|-----------|

M.T.L.5   C  DB F  F# G  B  C                6         6        2
           半 長3半 半 長3半
          |--------|--------|

M.T.L.6   C  D  E  F  F# Ab Bb B  C          6         8        2
           全 全 半 半 全 全 半 半
          |-----------|-----------|

M.T.L.7   C  Db D  Eb F  Fb G  Ab A  B  C    6        10        2
           半 半 半 全 半 半 半 半 全 半
          |--------------|--------------|

ということになります。縦棒(|)はオクターブを等分する単位を示し、縦棒から
次の縦棒へ音を動かすと幹音の構成は同じになります。従って、この間を半音単位
で刻んだ回数が移調可能回数となります。
ちなみに、この考え方でいくと半音階は、移調可能回数 0、音の数 12、オクター
ブを等分する回数 12回の移調不可能な音階ということになります。

メシアンって、この他に、逆行不可能なリズムとか、ペルソナージュ・リトミック
とか、いろいろ風変わりな技法を発明していますね。変なオッサンだったのでしょ
うね。

                                                        窪田 洋(TBE00266)