楽譜とMIDIと演奏解釈

SUB:RE^10:コンピュータ楽器の将来(?)

K&Aさん、永田さん&コメントツリーの皆様、こんにちは。割り込みます。

|そうすると、楽譜ってのはどういう位置づけなんでしょうね。MIDIデータも楽譜表示す
|れば楽譜と同等になっちゃうような気がするけど、MIDIデータとして圧縮(^^;)する際
|に落ちた情報ってのは、もともとの楽譜でも落ちてるってことになりませんかね?
|
|そう考えるとMIDIデータは、AUDIO信号の圧縮ではあるけれど、楽曲の圧縮ではないと。
|
|何言ってるかわかんないのでこのへんで止めます。

これ、すごいなぁ。まさに当たりだと思います。「MIDIデータは、AUDIO信号の圧縮
ではあるけれど、楽曲の圧縮では」ないのですよね。

永田さんが別のコメントツリーに書いておられたけど、楽譜は「伝統的な解釈」(文
化のことですね)が後ろにあって、その意味するものを解釈するのは人間だけど、所
詮、MIDIデータはコンピュータにインプットするための信号ですからね。

MIDIの規格の精度を高めれば、どんどん楽譜の世界(単に楽譜だけでは、それを支え
る解釈を含む世界)に近づくとは思うのですが、アナログととデジタル、同じにはな
らないのじゃないかしら(だからスコアをみながら、MIDIデータをいろいろいじる楽
しみは残るでしょうね)。

                                                          窪田 洋(TBE00266)
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SUB:RE:楽譜とMIDIデータ

永田さん、こんにちは。ますます話はそれていきますが(^^;。

僕の前のメッセージが舌足らずだったのかもしれませんので、補います。

・MIDIの規格の精度の問題

|》MIDIの規格の精度を高めれば、どんどん楽譜の世界(単に楽譜だけでは、それを支え
|》る解釈を含む世界)に近づくとは思うのですが、アナログととデジタル、同じにはな
|》らないのじゃないかしら(だからスコアをみながら、MIDIデータをいろいろいじる楽
|》しみは残るでしょうね)。
| 私はMIDIの能力が高まり演奏技術が発展するにつれて、どんどん楽譜の世界
|からは離れていくような気がします。特にクラシックの音楽では、「演奏」と
|「楽譜」とが一種の両極にあって、それぞれが支え合うことで音楽が成立して
|いますよね。MIDIデータ=演奏、Finaleデータ=楽譜、としてそれぞれが独自
|の世界で完成度を高めていくんじゃないかしら。

現在のMIDIの規格は、音の高さ(ノートナンバ)と長さ(ノートオン/オフ)以外の
パラメータに関しては曖昧に規定しているだけの不十分なものですね。
例えば、音の強さに関して言えば、ボリュームなりエクスプレションの値を設定/変
化させた時の物理的な値に関する規定がないので、音量がどう変わるかは機種しだい
です。音の強さ、ヴィブラート、アタック、リリース、ディケイなど、音楽表現に基
本的なパラメータは、現在の技術で物理的な値を規定できるはずなのに、機種毎にバ
ラバラというのはおかしいと思います。
音色まで完全に規格化するのは難しい(というか、今の所できない)と思いますが、
それ以外の現在曖昧な部分がある程度規格化されれば、あとは好みの問題だから、音
楽表現の互換性は確保できると思うのですが。

・ヒューマンインタフェースの問題

|(別にFinaleでなくてもいいですけど。楽譜記述のための共通フォーマット
|ってあるのかな?)
|
| 話がそれますが、私はシーケンサの楽譜表示機能ってほとんど使いません。
|なんか中途半端なんだな。楽譜を表示するなら専用のソフトでないと困る。
|MIDIを表示するならピアノロールの方がはるかに正確、というわけで・・・

人にとってピアノロールより楽譜表示の方が優れたインタフェースだと思います。僕
も仕方がないので、ピアノロールとマクロを愛用していますが(^^;、楽譜画面からク
レシェンドとか、スタカートとか、ブレスとかマウス入力してデータを作成できたら
いいなあと思っています。
コンピュータ言語が機械語→アセンブラ→コンパイラ→4GLと人間の操作しやすい
ものに変わって来たように、MIDIデータの入力方法ももっと改善されるべきだと思い
ます。MIDIの規格の精度とシーケンサの機能が上がれば、これも技術的には可能なの
に、なんで実現できないのかなぁ。
おっしゃる通り、《クラシックの音楽では、「演奏」と「楽譜」とが一種の両極にあ
って、それぞれが支え合うことで音楽が成立して》いるわけだから、演奏解釈のため
の調整はマウス操作や数値入力で残ると思いますが、もっとMIDIの世界が人間に近づ
く必要があると思います。マクロ使ってコントロールチェンジを調整していると、大
昔、アセンブラでプログラミングしていた頃を思い出すのですがねぇ。

このように、MIDIの規格及びシーケンサのヒューマンインタフェースが楽譜の世界(
単に楽譜だけではなく、それを支える解釈を含む世界)に近づけば、MIDIで音楽をす
る世界はどんどん楽譜の世界に近づくと思います。9番会議室で話題になっているよ
うな問題も、このような制作環境が実現されれば、ある程度解決するばずです。
もちろん、そのような世界でも最終的な解釈を行うのは人間で、どんなに精密に書か
れた楽譜でも、そのままスキャナ入力するだけでは音楽にならないことは、いうまで
もありませんが。

                                                         窪田 洋(TBE00266)
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SUB:RE^3:楽譜とMIDIデータ

永田さん、こんにちは。

|の音で鳴らす」という長い道のりが待っています。この段階では楽譜表示の持
|つさまざまな制限からはなるべく解放された方がよいと思います。この段階で
|一番大事なのは、自分の鳴らす音を完全に把握して自由にコントロールできる
|ことでしょう。ピアノロール表示はこの点で非常に優れています。もっと優れ

僕も、現在のMIDIの規格を前提にすると、自在にコントロールするには、ピアノロ
ールの方が優れていると思います。確かに、良く出来たピアノロールは MIDI デー
タで鳴る音の視覚的なイメージをグラフィカルに見せてくれるし、画面からの操作
もしやすいですね。

ただ、コンピュータに詳しくない普通の音楽愛好家に、ノートのオン/オフ、ヴェ
ロシティ、コントロールチェンジなどのMIDI情報を、図形化しているとはいえ、む
きだしに見せるのはどうかなという気がします。

楽譜表記でも、音の強弱、表情、テンポ、間合いなどを変えるさまざまな記号が用
意されているのですから、工夫すれば、あるレベルまでの音楽表現は十分可能だと
思います(例えば、クレシェンドの仕方は、表記記号をクリックすると、グラフィ
カルに指定できるとか、テンポやブレスや音の長さは楽譜の下に図形表示して、い
じれるとか)。それを越えた精妙なコントロールはピアノロールなり数値入力で好
きなだけできるようにすれば、良いのではないでしょうか。

もっとも、そうなると、この会議室に生息していらっしゃる皆様はもっぱらピアノ
ロールか数値入力で勝負ということになり、今と何も変わらないかもしれませんが
(僕もそうかもしれないなぁ)。

# Cakewalkのピアノロールは特に不足している機能はないのですが、いまいちです
  ね。例えば、ピアノロールのウィンドウとコントロールのウィンドウが別とか、
  色を変えた区切りが1オクターブ単位なので、離れた場所の音の高さが分かりに
  くいとか、マウスで調整する時、バーの長さ/位置の微妙な調整が出来ないとか
  、いろいろあります。
  Windows版の Vision、試してみたことがあるのですが、ピアノロール画面は良く
  出来ているなと思いました。ただ、MAC の操作体系をそのまま持ってきているの
  で、Windows では違和感があるのと、マクロがないので、乗換えは見合せました
  (^^;;。

                                                        窪田 洋(TBE00266)
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SUB:楽譜の話

という次第(14番会議室から移ってきました)で、楽譜について。

|演奏者が音楽表現を自分のものにするためには、「楽譜を完全に消化して
|表現しなおす」という過程が不可欠でしょう。楽譜表示に表情づけのため
|の表記をいろいろ重ねていくというアプローチで果たしてそれが実現でき
|るかどうか・・・

おっしゃる通りだと思います。ただ、ちょっと過激じゃないかと・・・。いわゆる
クラシック音楽の場合、解釈の基本にあるのは楽譜だと思うのですが・・・。以下
、僕のクラシック音楽の楽譜に関する雑感です。

いわゆるクラシック音楽の基盤(プラットホーム)はヨーロッパ近代音楽の記譜法
にあると思います。
アジアやアフリカの音楽にも音を紙に書き残すしくみはあるのですが、西欧音楽に
あるスコア(総譜)という考え方はないですね。合奏する時は、パート譜を適当に
組み合わせ、即興させる。

作曲家という存在は西欧の音楽だけのものですね。ラーガの演奏家はいるけど、誰
がその曲を作曲したか尋ねる人はいない。ガムランの演奏グループはあるけど、座
付きの作曲家は存在しませんね。スコア(総譜)が存在し、曲のイメージをそれな
りに紙に書き残すことが可能になって、曲の作曲者名も残ることになったのだと思
います。

確かに、楽譜だけでは音楽にならないのですが、西欧音楽の場合、基本的にはスコ
アで曲のイメージを伝えることができる。ガムランの数字譜からあの豊穣な響きを
想起することは難しいですけど、オーケストラスコアを眺めれば曲の姿はつかめま
す(僕はできないのですけれど)。西欧音楽の強みはこの楽譜による伝達性の高さ
だと思います。だから、中国にも、インドにも、エジプトにもクラシックのオーケ
ストラが存在することになったのでしょうね。

# 僕はスコアを眺めながらデータの最終調整をするのですが、皆様、どうなのでし
  ょう。ピアノロールで、数値データを見ながら、あるいは暗譜で曲聴きながらな
  ど  いろいろなのかしら。

# 楽譜の話で盛り上がっていますね。僕の持っているヤツの最高値は8900円(
  マショーのモテト全集)、最安値は80円(昭和30年(^^;; 、音楽之友社発行
  の入野義朗のシンフォニエッタ)です。どっちも、そのうち打ち込んでやろうと
  思っているのですが・・・。

                                                        窪田  洋(TBE00266)
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SUB:RE:メシアン拝聴>清水和彦さん

清水さん、山本さん、こんにちは。割り込みます。

|この曲の場合、もちろん優れた演奏者が弾けば素晴らしい演奏が可能なわけですが、
|人間が弾く以上、まず機械的困難を克服しないといけない・・・そこのところ
|をはずしてしまったこの演奏では、作曲者の意図が、少なくとも人間の限界には縛ら
|れることなしに実現されている.それが快感なのだと思います.

同じメシアンに「音価とリズムのためのエチュード」という、音の長さ(音価)、
強さをセリー化した実験作があります。
この楽譜、全ての音符に音強、音色(アタック)の指定が付いており、タイで繋が
ったヘンテコナな音長のオタマジャクシだらけで、2/4拍子モデラートという指
定はあるのですが、拍節は時間の進行をしめす以外の意味はなく、速度関連の記号
は、一切、使われていません。まるで、電子音楽の楽譜です。

ほとんど演奏不可能にみえる楽譜を眺めていて、この曲を譜面通り入力して、人の
演奏と比較したら、面白いだろうなという邪な(?)考えが浮かび、データ化して
みたことがあります。
出来上がったデータと高橋アキさんのレコード演奏を比較したのですが、ほとんど
同じリズムで演奏されているのに驚きました。もちろん、高橋さんの演奏の方がよ
り生き生きとした表現とニュアンスにとんでいます。改めて、演奏家の偉大な力を
認識させられました。

ただ、清水さんのデータを拝聴して、僕も山本さんと同じように感じ、楽しく聴き
通しました。最初に作曲者の頭の中で鳴った音はこんな感じだったのかなとも思い
ました。

まあ、人が弾いている感じをだすには
・ベースライン、メロディラインを意識して和音の構成音のベロシティやアタック
 を変える
・曲の流れに合わせてテンポをいじりまくる
など、ベテランの皆様がとっておられる手口がありますが、こういう曲のばあい、
変にいじると、かえっておかしくなりますからね。

末筆になりますが、清水さんに、素晴らしい曲のデータのアップロード、お礼申し
上げます。

                                                        窪田  洋(TBE00266)