ローランド社の電子チェンバロ
SUB:電子チェンバロの感想です(長文)
#00581へのコメントです。かなり前のメッセージへのコメントなので、コメント扱
いせず、メッセージとしてアップします。
また長文です。興味のない方はスキップしてください(オートパイロットでダウン
している方、ごめんなさい)。
電子チェンバロ(ローランド社C20)買いました。御茶の水の楽器店で中古品を
安く売っているのを見つけたので、定価の半額位で購入しました。息子の高校進学
祝いという口実で女房を説得でき、実によいタイミングでありました。購入にあた
り、清水康之さん、生物屋さんの情報には随分助けられました。ありがとうござい
ました。
以下、実際に使ってみてのレポートです。
・外観
本体部分(幅94センチ、奥行き46センチ、高さ15センチ)を木製の台(足で
す、高さ65センチ、結構頑丈でフラフラすることはありません)の上に乗せる構
造となっています。塩ビ木目調で外装されており、それほど高級にみえませんが、
まあ落ち着いた雰囲気で、個人的には気に入っています。
・キーボード/キータッチ
61鍵(CakeWalkのディフォルト表記でF2〜F7、普通の61鍵のキーボードは
C3〜C8だから、完全5度下にシフト)。プラスチック製(木製でないのは残念
)。ピアノの白鍵部分が黒く、黒鍵部分が茶色に塗られているのは、本物のチェン
バロといっしょ。
キータッチはシンセサイザ風の軽いタッチですが、ちょっと変わっています。アフ
タータッチがえらくきつく、プラスチック製のキーボードと相まって、最初は相当
に違和感がありましたが、そのうち慣れてしまいました。
キーボードはタッチセンスの有/無を電源投入時に指定できるようになっています
(ディフォルトは無し)。上記のキータッチとも関連するのですが、このタッチセ
ンスの感度がえらくシビアで、僕の腕ではとても使いものになりません(少し強く
弾くと、全部フォルテシモ、少し弱く弾くと、全部ピアニシモになってしまう)。
まあチェンバロはもともとベロシティの効かない楽器なので、タッチセンス無しで
使って、問題はありませんが、ちょっと悲しい。
この他、本物のチェンバロにはない付加機能として、サステインペダルとエクスプ
レションペダルをつけることができます。オルガンなど持続系の音を使う時には、
有効かもしれません。
・音質
かなりいい線いってると思います。本物のチェンバロとの差はピアノと電子ピアノ
の場合より小さいといえそうです。ピアノと比較して、音の強弱やペダルによる音
色の変化がない、音域の範囲が狭いなど、電子的に生の音をシミュレートする際の
条件の良さが幸いしているのでしょう。
もちろんアコーティクな楽器の持つ精妙な音色は期待する方が無理ですが、外部出
力を使って、ちゃんとしたオーディオ装置につなげば、ちょっと録音の悪いCDの
チェンバロ並の音はします。SC88などのGS音源や電子ピアノのおまけのチェ
ンバロの音色と比較すると、完全に1レベル上の音だと思います。
また、本物のチェンバロに特有のキーを離した時にピックが弦にふれて発生する雑
音も再現しています(生の楽器より耳障りに聞こえるような気がしますが)。この
音は電源投入時に指定し、再生させないようにすることもできます。
・音色
8I、8ll、8I+8ll、8I+4、Luteが出せます(Luteはほんものの
リュートではなく、チェンバロのLute)。減衰の速い音ほどリアルに聞こえる
ような気がします(Lute、8I、8ll、8I+8ll、8I+4の順にベター)
。減衰時間の短い音ほど、電子的にはシミュレートの難しいアコースティックな響
きが減るからですかね。
他に、持続系の音としてストリング、オルガン1、オルガン2が有ります。
オルガン1、オルガン2の音は素晴らしい出来です。オルガン1は鄙びた教会の古
いオルガンのようなシックな音、オルガン2はもう少し大きめの教会の多少本格的
なオルガンのような音です。それぞれルネサンス、バロックの音楽にピッタリの響
で、お勧めです。サステイン/エクスプレションペダルや後述する調律機能と組み
合わせれば、チェンバロよりこっちの方が使えるという感じさえします。
ストリングは、まあ、おまけというところでしょう。
鍵盤が1段なので、上鍵盤と下鍵盤で音色を変え、組み合わせるということはでき
ません(大いに不満)が、減衰系の音色一つと持続系の音色一つを同時にならせま
す(一応マルチティンバー)。あまり、使い道はなさそうです。
また、サステインペダルを電源投入時の設定で音色の切替えスイッチとして利用す
ることができます。(これは、便利そう。さっそくペダルを買いに行かなくっちゃ
あ)。
この他、音色のコントロール機能として、ブライトネス(GSのカットオフフリュ
ーケンシーに相当すると思います)、リバーブの量を指定するボリュームがあり、
更にリバーブについては、切替えボタンで room と hall の設定が可能です。
リバーブの効き方は相当強烈で、 hall だと、ほとんど風呂場でチェンバロを弾い
ているという感じになります。
また、チェンバロの8I+8ll、8I+4音色は8ll、4側を前面のボタン操作で
デチューンさせることができます。いろいろいじってみましたが、結構雰囲気が変
わり、なかなかおもしろい(もちろん、音は濁ることになります)。
・調律機能
平均律、純正律、中全律、ヴェルクマイスタ、キルンベルガの音律(あとピュタゴ
ラス律を入れて欲しかった)がワンタッチ(厳密にいうと調律ボタンを押しながら
、設定したい音律種類のボタンを押し、基音のキーを押す。短調なら、以上の操作
にプラスして、短3度上のキーを押す)で選べます。
この機能は大変に便利で、操作も分かりやすい。音律による曲の聞こえかたの違い
をいとも簡単に実験できるので、とても気に入っています。
また、チューニングが可能です。問題はこの調整ツマミがMIDIケーブルなどつ
なぐ本体後部のパネルにあることで、他の楽器に合わせて、チューニングする時、
めんどくさそうです(発音させながら、チューニングするには、二人がかりか、オ
ランウータン並の手の長さがいる)。
・MIDI機能
IN、OUT、THRUそれぞれ1個。同時発音数は16。普通にチェンバロとし
て使っている分にはまったく問題ありません。
前述したように、一応マルチティンバー音源なのですが、2チャネルしかなく、片
方のチャネルにチェンバロの音色一つ、もう片方のチャネルにストリングかオルガ
ンの音色一つという組み合わせしかできないので、チェンバロ協奏曲位しか、使い
道はなさそう。上下の鍵盤でチェンバロの音色を変えたような作品(現代作品にい
っぱいある)の正確な再現ができないのは、残念無念。
上に完全4度、下に増4度の範囲で移調できるので、発音可能な音域はB1〜A#
7となります。MIDIボタンとキーの操作で移調できるようですが、使ったこと
はありません。
また、MIDIボタンとキーボードの操作でプログラムチェンジを MIDI O
UTに出すことができるのですが、なんと8進表現(例えば、GMの48番ストリ
ングは60と入力する)。なんで、こんなややこしいヒューマンインタフェースに
したのかなと思いました。
MIDI IN で取り扱えるコントロールチェンジはボリューム、エクスプレシ
ョン、サステインペダル、リバーブだけ。ヴィブラートやウィールは使えませんが
、楽器の性格を考えれば、特に問題ないでしょう。
プログラムチェンジの番号はGMとは無関係に付けられています。GMデータを鳴
らすときには、プログラムチェンジの書換えが必要です。
また、タッチセンスの有無、キーを離した時のノイズの有無、ブライトネス、デチ
ューン、音律の種類などはシステムエクスクルーシブでも設定することができます
。音律については音律の種類と基音を番号で設定するだけなので、GSのように細
かなセント値を意識する必要がなく、便利そうです。
・オーディオ系
本体部分キーボード奥のパネル面にスピーカを隠してセット。その後ろ20センチ
はかなり広い平面となっており、ものを置くのに便利。
オーディオの外部入力が可能なので、ノートパソコン、音源などここに置けば、楽
器の前に座ってでDTMができる。ただし、内蔵のアンプ/スピーカはチェンバロ
の音源に合わせたチューニングがしてあるようで、試しにMIDI入力用に使って
いるシンセサイザーを繋いでみましたが、貧弱な音しかしませんでした。
オーディオの外部出力もできますが、内蔵スピーカをオフするにはヘッドフォーン
ジャックにプラグを差し込む必要があります(なんで外部出力につないだら内蔵ス
ピーカオフにしなかったのだろう)。
以上、徒然なるまま、ダラダラと書きつらねましたが、総合的には、
1)チェンバロの音はかなりの水準である
2)オルガンが意外にいい音がする
3)設定の容易な音律機能がある
4)一部変なところもあるが、全体として操作性はマアマア
5)MIDI機能は弱いが、一応使える(チェンバロやオルガン曲の再生には最適)
という理由から、結構満足しています。これで、二段鍵盤、チェンバロの音色が完
全にマルチティンバーになれば、いうことないのですがね。
窪田 洋(TBE00266)
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